紹介予定派遣は、なるべくミスマッチなく就職したい場合に活用できる制度で、正社員を目指すルートとしておすすめできる転職方法です。紹介予定派遣では、実際の働きぶりや強みをアピールして転職ができるため、しっかりと現場で自分なりの力を発揮して正社員採用につなげられる有効な手段でもあります。とはいえ紹介予定派遣は、正社員採用を確約するものではなく、場合によっては思うように就業できない可能性も少なからずあるものです。そこで今回は、紹介予定派遣を通じて正社員として転職したい時に、知っておきたい基礎知識や気を付けたいポイントなどを解説していきます。
そもそも紹介予定派遣とは?
紹介予定派遣とは、直接雇用となる職業紹介を前提とした労働者派遣の一つで、実際の就業期間を通じて本採用や入社を決められる制度を指します。就業先と雇用関係を結ぶにあたり、いわばお試しとして、あらかじめ派遣社員になって現場を経験できる仕組みです。なお紹介予定派遣は、あくまで直接雇用に向けた制度で、本採用後の雇用形態は正社員に限りません。場合によっては、契約社員やパートとして直接雇用となるケースもあります。とはいえ正社員を目指せる紹介予定派遣に就きたいのであれば、その旨を派遣元にきちんと伝えておくことで、希望に応じた求人を探してもらえるのが基本。紹介予定派遣を活用する際には、まずは派遣元と自分自身との認識を十分にすり合わせておくのも重要です。
紹介予定派遣の入社希望者で本採用になる確率は約7割
紹介予定派遣では、一定の派遣期間中または終了後に、就業先と派遣社員とのどちらも合意したうえで直接雇用となります。自動的に直接雇用となるわけではなく、あくまで就業先による本採用の判断と、派遣社員側の入社の意思のもとで決定する仕組みです。そのため紹介予定派遣では、必ずしも直接雇用が約束されているわけではない点には注意しましょう。
こうした紹介予定派遣のシステムを踏まえつつ、紹介予定派遣から直接雇用となる確率は、厚生労働省の調べによると約52.3%(※1)。ただし紹介予定派遣から、直接雇用を希望する派遣社員の割合は約7割(※2)で、本人の意思で入社しないケースも多く見られることがわかります。こうした部分を考慮すると、自ら入社を希望する派遣社員で、本採用が決まる比率としては7割程度。紹介予定派遣から就職できる可能性は、比較的高めといえるでしょう。
(※1)(※2)(※3)厚生労働省「令和5年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」
紹介予定派遣から正社員になるまでの流れ
では実際に、紹介予定派遣で正社員を目指すにあたり、入社に至るまでに必要なステップを見ていきましょう。
▼まずは派遣会社に登録
▼派遣会社の担当者との面談を実施(希望する派遣先の条件などのすり合わせをします)
▼希望条件に適した派遣先の紹介・本人による確認(派遣にともなう面接や書類選考の可能性あり)
▼派遣先とのマッチングができたら就業開始
▼派遣社員として勤務(最長6ヶ月)
▼派遣期間中または終了後、派遣先と派遣社員の双方の意思を確認(別途面接などの可能性あり)
▼それぞれが合意したら直接雇用(正社員)へ
派遣社員としての就業開始前には、具体的な勤務形態や、直接雇用後の待遇などを明示されるのが基本です。紹介予定派遣を通じて正社員として活躍したい場合には、まずは就業開始前に受け取る書類には十分に目を通して、自分の希望に適した働き方ができそうなのか確認しておきましょう。
紹介予定派遣から正社員を目指すメリット
紹介予定派遣では、一般的な転職活動とは大きく異なる部分が多く、実際に活用することで得られるメリットも多くあります。では紹介予定派遣を通じて、正社員を目指す際に想定される利点も見てみましょう。
入社前に勤務先や担当業務との相性を見極められる
通常の転職活動では、求人サイトや採用ページ、面接などを通じて、自分の希望する勤務先なのか判断する必要があります。一方で紹介予定派遣では、派遣社員として就業している期間中に、入社すべきなのか検討できるのが大きなメリットです。例えば求人票などのデータだけでは、職場の雰囲気や担当業務との適性など、本当に自分自身に適しているのか見極めるのが難しい部分もあるでしょう。そこで紹介予定派遣により、現場で実務を経験して派遣先との相性を確かめてみることで、入社後のミスマッチを防ぐことが可能です。
一般公開されていない大手企業の求人紹介を受けられるチャンスもある
紹介予定派遣は、企業側としても各人材の適性を見極めやすいこともあり、一般的な求人をしていない大手企業などで活用されているケースも多々見られます。なかには紹介予定派遣に限って、人材採用をしている場合もあり、こうした貴重な非公開求人とマッチングができる可能性も。また派遣社員として働きながら、しっかりと自分の実力をアピールしやすく、正社員としての採用につながりやすい一面もあります。
プロからのフォローのもとで転職活動ができる
紹介予定派遣では、希望条件に合った求人検索やマッチングから、派遣元にフォローしてもらうことができます。人材のプロ目線から、各求職者の経験や能力に適した派遣先を選んでもらうことができ、きちんと本採用につながりやすい求人に出合いやすいのもメリット。また本採用に向けた書類選考や面接の対策・アドバイスなどのサポートも受けられ、プロの力を借りながらスムーズに転職活動を進めやすい利点もあります。さらに入社にあたっての勤務条件などの交渉も、基本的には派遣元に仲介・代行してもらうことができ、労働環境に対する不安や疑問を解消しやすい効果も見込めます。
未経験からチャレンジしやすい
紹介予定派遣では、企業側としても実際の働きぶりを確認しやすく、即戦力でなくても現場でのポテンシャルを見込んで未経験から採用するケースは多々見られます。また派遣社員側も、自分の実力を発揮して活躍できれば、書類選考や面接時の言葉だけでは伝わりにくい強みをアピールできます。入社後のイメージが明確になりやすいからこそ、未経験者の積極採用として紹介予定派遣を活用する企業も多く、新たにチャレンジしやすい利点もあります。
紹介予定派遣の活用時に覚えておきたい注意点
紹介予定派遣では、企業側が本採用の判断に至らなければ入社はできません。仮に派遣期間中に、何か勤務上に問題が見られたら、正社員としての直接雇用がされない可能性も。また紹介予定派遣は、あくまで直接雇用が前提となり、なかには正社員採用にならない求人もあります。就業開始前に提示される条件は、くまなくチェックしておくことも欠かせません。
ちなみに紹介予定派遣で勤務できるのは、最長でも6ヶ月です。もしこの派遣期間中に、派遣先と派遣社員が合意しなければ、あらためて新しい就業先を探し直す必要があります。
ただし派遣先が直接雇用を断る場合には、なぜ採用にならなかったのか、その理由を本人に明示しなければならない義務があります。こうした点からも、基本的には問題なく業務を遂行できていれば、派遣社員の希望次第で本採用となる確率は比較的高いのが通常です。とはいえ入社後の活躍が見込めそうになければ、本採用にはつながりません。きちんと派遣先から、自分自身の能力や強みを認めてもらえるように、前向きな姿勢や着実な業務遂行などを意識しておくことも大切です。
紹介予定派遣で正社員になれない場合によくあるパターン
では紹介予定派遣で正社員を目指すにあたり、気を付けておきたい就業時の失敗パターンもご紹介。紹介予定派遣における本採用に向けては、次のようなポイントも意識しておきましょう。
基本的な就業ルールを守れない
当然ではありますが、社内の就業ルールをきちんと守れない場合には、正社員としての採用は難しいと判断されてしまいます。企業側は、長期的な安定した活躍を見込んで、はじめて期間の定めなく雇い入れる正社員としての採用を決めることができます。例えば「遅刻が多い」「出勤日数が明らかに足りない」など、基本的な勤務態度に問題が見られるようでは、いくら能力やスキルがあっても採用には至りません。企業側としても、「なるべく長く勤続して戦力になってほしい」との期待があるからこそ、就業ルールに沿って支障なく勤務できる人材が求められます。
周りの仲間との連携意識が低い
どのような仕事や職場でも、組織に所属するからには、周りの仲間と連携しながら業務に取り組む必要があります。例えば「報告・連絡・相談ができない」「挨拶しない」など、基礎的なコミュニケーションができていないと、本採用にはつながらない可能性が高いでしょう。もちろん積極的にコミュニケーションができれば評価されやすいですが、まずは仲間との情報共有や意思疎通など、最低限のチームワークの意識は欠かせません。なるべく周囲との交流も心がけておくと、本採用につながる確率も高まるでしょう。
派遣先の社風との大きなギャップがある
各人材と社風が合わないと、どうしても勤続するなかでのギャップ感が生まれやすく、本人とっても思うような活躍がしにくいケースも見られます。企業として目指すビジョンと各人材の理想とする働き方が合致していないと、場合によっては早期離職につながってしまうリスクもあり、不採用となってしまう可能性も。こうしたミスマッチを防ぐためには、あらかじめ勤務先の企業サイトや採用ページなどを確認して、どのような人材が求められているのか把握しておくことも大切。そして自分と合いそうな職場であれば、実際に派遣として就業しつつ、各企業のスタンスも意識しながら力を発揮できるのがベストです。
担当ポジションの適性が見込めない
紹介予定派遣では、未経験から挑戦できる求人もある一方で、即戦力を求めているケースも少なくありません。紹介予定派遣の期間中に、あまりにミスが多い・指示されたタスクが進まないなど、業務遂行に問題が見られる場合には不採用となってしまう可能性も。また例えばリーダーポジションの採用で、「マネジメントが苦手」など担当業務に必要なスキルが不足していると、採用に至らないパターンも考えられます。あらかじめ派遣元には、自分の経験やスキルを正確に伝えておくことで、きちんと採用につながりやすい求人とのマッチングが可能です。
まとめ
紹介予定派遣は、派遣社員として働いて収入を得つつ、現場を経験しながら入社に向けてじっくり検討できる転職方法です。ただし必ずしも正社員としての採用が約束されているものではなく、派遣先からの合意がないと、雇用されない可能性もある点には注意が必要。今回見てきたようなポイントを意識しながら、まずは派遣社員としてしっかりと力を発揮していくことで、問題なく正社員としての採用にもつながっていきます。正社員を目指す転職をお考えの際には、ぜひ本記事も参考に、紹介予定派遣の活用も考慮してみてください。