
仕事を辞める決意が固まってきた際には、例えば上司に相談・報告するなどの準備を進めていく必要があり、そのなかでも早めの段階で決めておきたいのが退職日です。退職日がきちんと決まっていないと、社内の手続きや業務の引き継ぎなどの対応が進みづらく、また自分自身としても次の行動に移りづらいでしょう。そこで今回は、できるだけ損のないベストなタイミングでの退職に向けて、知っておきたいポイントを解説していきます。
退職日によって何がどう変わる?

大前提として、すでに転職先が決定している場合には、次の勤務先に入社する時期に応じて退職日を調整するのが一般的です。
ただし退職してから転職活動をするなど、まだ新たな勤務先が決まっていないのであれば、特に制限はないため本人の自由に設定できます。もしくは「転職先は決まっているものの、入社まで少し期間が空きそう」などのケースも、猶予がある分、退職日に迷ってしまう可能性もあるでしょう。
こうした際に、なるべく損しないように仕事を辞めたいと考えるのであれば、退職日によってどのような影響があるのか把握しておくことも重要です。なお退職するタイミング次第で、取り扱い方が変わってきやすいのは、おもに社会保険料・有給休暇・賞与・退職金・失業保険の5つ。これらを考慮して退職日を決めていくことで、できるだけマイナス感を抑えつつ、仕事を辞めやすい利点があります。
退職するタイミングはいつが得?退職日の決め方で注意したいポイント

ではここからは、先ほども出てきた社会保険料・有給休暇・賞与・退職金・失業保険の5つに注目して、どのように退職日を決めるとよいのか詳しく見ていきます。
保険適用を考えるなら月末がおすすめ
会社などに雇用されていて、その勤務先で健康保険や厚生年金に加入している場合、退職してしまうと適用されなくなります。
もしすでに転職先が決まっていて、すぐに次の職場で健康保険や厚生年金に加入できそうなら、合間なく引き続き適用されるので問題はないでしょう。しかし「転職先が決まっていない」「入社までに期間がある」などの場合、雇用による社会保険が適用されないため、自分で国民健康保険や国民年金に加入する必要があります。
特に健康保険は、直近で病院にかかる可能性があると、医療費の負担に大きく影響するので要注意。退職日の翌日以降は、前職で加入していた健康保険は使用できないうえに、誤って使ってしまうと医療費全額分が請求されることになります。
ちなみに前職における社会保険料の天引き額は、退職日が月末かどうかで変わってきます。なお社会保険料は、各月の末日に、前月分の天引き額が発生する仕組みになっています。具体的な数字で考えるなら、5月31日時点で、4月分の社会保険料が発生します。そのため退職日に応じて、次のように社会保険料が天引きされます。
<毎月25日締め・当月末支払いの場合>※5月退職で想定
【月中に退職(1日~29日)】
5月分給与から4月分の社会保険料を天引き
【月末の前日に退職(30日)】
5月分給与から4月分の社会保険料を天引き+6月分日割り給与(5月26日~5月30日勤務分)
【月末に退職(31日)】
5月給与分から4月・5月分の社会保険料を天引き++6月分日割り給与(5月26日~5月31日勤務分)
月末を退職日にしたほうがいい理由は?
上記のように、月末を退職日にすると、当月分の給与から2ヶ月分の社会保険料が天引きされることになります。そのため単純に社会保険料の天引き額を考えるなら、月末を避けたほうが給与の手取り分が大きくなるため、得しているように感じるでしょう。
ただし雇用による健康保険や年金の料金は、勤務先が半額負担しているため、国民健康保険・国民年金を個人的に支払うよりも金額は低くなります。そこでもし月の途中で退職して、そこから国民健康保険・国民年金に加入するとなれば、結局のところ負担額は大きくなってしまいます。仮に雇用先から天引きされる健康保険・厚生年金料が3万円だったとすると、月中と月末では、次のように負担額が変わるイメージとなります。
【月の途中で退職(月末日以外)】
前月天引き分(1万5,000円)+当月の新規加入分(3万円)=計4万5,000円
【月末に退職】
前月天引き分(1万5,000円)+当月天引き分(1万5,000円)=計3万円
このように月中と月末の退職では、自己負担額が変わってきてしまうので注意が必要。もし少しでも、自分自身で国民健康保険・国民年金に加入する期間がありそうなら、月末を退職日にしたほうが損しない可能性が高いでしょう。
有給休暇の残日数と有効期限に合わせる
もし退職するタイミングで、有給休暇が残っているのであれば、最後にまとめて取得する方法も考えられます。
このように有給休暇の消化期間を設けたい時には、最終出勤日と退職日をずらして調整すると、給与を得ながら休めるので得した気分になれるでしょう。仮に有給休暇が20日分残っていて、月末に仕事を辞めたい場合には、「当月日数-有休残日数」の日付を最終出勤日にするときれいに消化できます。
なお有給休暇は、法律上の規定では勤続半年後に最低10日間設定したのち、1年ごとに所定の日数に応じて付与していくのが基本ルールとなっています。ただし各時期に付与された有給休暇は、いつまでも残って加算されていくわけではなく、消化しないと古い順に消滅します。
ちなみに有給休暇の有効期限は、付与から2年間となっています。具体的な数字を当てはめて考えてみると、次のようなイメージとなります。
【2019年4月1日入社の場合】
仮に有給休暇を使わないまま残していくと、法定内のルールに沿って付与されている場合、以下のように残日数が変動していきます。
2019年10月1日/10日間付与(残日数10日)
2020年10月1日/11日間付与(残日数21日)
2021年10月1日/12日間付与(残日数23日)※2019年の「10日間」が消滅
2022年10月1日/14日間付与(残日数26日)※2020年の「11日間」が消滅
上記で考えてみると、例えば「2021年9月30日」を退職日にすると、有休消化に使えるのは「21日」。それが1日ずれた「2021年10月1日」になると、過去の未消化分は消滅するものの、新たな付与分が加算されて「23日」の有休消化ができることになります。
このようにタイミング次第で、使用できる有給休暇の日数が異なってきます。できるだけ有効に有給休暇を使うためには、「現時点の残日数・消滅日数・新たな付与日数」を、すべて考慮して最終出勤日と退職日を決めるのがベストです。
賞与を受け取れるタイミングなのか要チェック
賞与の支給がある勤務先では、できるだけ収入面を重視したいのであれば、きちんと受け取ったのちに退職できるタイミングにするのがおすすめです。例えば7月・12月など、企業ごとに賞与の支給月は固定されているのが一般的なので、毎年の決まったに時期に合わせて退職日を考える方法もあります。
また退職にともなう賞与の支給方法は、会社によって異なる部分もあり、なかには個々の実績を考慮して前払いに対応してもらえる可能性も。その他にも賞与に向けた査定・人事考課が済んでいれば、通常の支給時期でなくても、退職前に支払うなどのフォローをしているケースもあります。直属の上司などに、もし退職の旨を伝える際に相談できそうであれば、賞与に関して質問してみるのもいいかもしれません。
退職金の受給条件も事前に確認
退職金制度がある場合には、仕事を辞めるタイミングによって、受給の可否や金額は変わってくるのが一般的です。
なお退職金制度の有無や支給方法については、特に法律上で決められたルールなどはなく、受給条件は企業ごとの就業規則に応じて設定されています。ちなみに退職金制度の受給条件としては、「勤続3年以上」というように、在籍した年数によって適用するかどうか規定しているケースもよく見られます。なかには在籍年数に合わせて、「基本給の○%×何年分」など、退職金の金額が変動する例もあります。
もし退職金制度を導入している勤務先なら、まずは在籍年数などの受給条件をあらかじめ確認して、仕事を辞める時期を検討してみるのもおすすめです。
出勤日数が少ない場合には失業保険の適用も考慮
転職先が未定で、なおかつ退職後から新たな勤務先を探すケースでは、雇用保険による失業保険を受け取ることができます。ちなみに失業保険の受給に向けては、いくつかの条件が設定されていて、なかでも退職日を決めるにあたっては雇用保険の適用期間には注意が必要です。なお失業保険を受け取るためには、退職日以前の2年間のうち、合計して12ヶ月以上の雇用保険の適用期間が必須となります。
とはいえ基本的に週5日のフルタイムで出勤していれば、この失業保険の適用期間の条件はクリアできるため、一般的な正社員勤務なら特に問題はありません。
ただしこの失業保険では「労働日数が11日以上になった月=1ヶ月」としており、もしあまり出勤できていない期間がある場合には、状況次第で適用から外れる可能性も考えられます。
フルタイムなどで問題なく勤続できていれば心配はないものの、元々の出勤日数が少ないなどのケースでは、退職日の決め方によって失業保険に影響することも想定しておくと無難です。
できるだけ円満に退職するための確認事項

ここまでに見てきた注意点だけでなく、退職する際には、できるだけスムーズに手続きや準備ができるようにしておくのがベストです。次のような部分にも配慮して、退職日を設定するようにしましょう。
退職の申し出は就業規則に沿ったタイミングでおこなう
一般的に各企業では、「退職日の1ヶ月前までに申告」など、仕事を辞める旨を申し出るタイミングは就業規則などで定めています。従業員が一人でもが抜けてしまう場合には、例えば新たな人材の採用など、欠員を埋めるためのさまざまな対応をしなければなりません。こうした準備のためにも、退職を検討する際には、急な事情がない限りはできるだけ前もって申告するのが通常。もし自分のなかで退職日を決めているのであれば、就業規則に沿ったタイミングで申し出ができるように、あらかじめ社内のルールを確認しておきましょう。
年末に近い時期には年末調整後に退職するのがおすすめ
毎年の年末は、年間の給与額が確定するタイミングとなるため、所得税の過不足を補てんする年末調整が実施されます。仮に年末に近い時期で、退職を考える際には、できるだけ元々の職場で年末調整をしてから辞めるのがおすすめ。すぐに転職先に入社できれば、新たな職場で年末調整をしてもらえるケースもありますが、タイミングが悪いと次の会社では対応してもらえない可能性もあります。勤務先で年末調整ができないと、自分で確定申告をする必要も出てきてしまうので要注意。できるだけ手続きの手間を省きたいのであれば、年末調整を終えたあとに、退職できるとよいでしょう。
業務の引き継ぎ期間も考慮して退職日を決める
自身が退職して人材が抜けてしまう分、どうしても誰かしらにその穴埋めをしてもらわなければなりません。そのため退職するタイミングは、業務の引き継ぎ期間も考えつつ、計画的に決めていくのが無難です。退職や転職を決めた時点で、まずは上司や同僚に相談して、いつからどのように引き継ぎをしていくのか事前に検討しておくのがベストでしょう。また引き継ぎにどれくらいかかりそうなのか、自分の担当業務を整理して、あらかじめ洗い出しをしておくことも重要です。場合によっては現状の担当業務を分担して、複数のメンバーに割り振る必要が出てくることもあります。できるだけスムーズに引き継ぎをして、自分が退職したあとも問題なく業務が遂行できるように、全出勤日が終わる前までに調整しておきましょう。
なるべく繁忙期を避けたタイミングに調整する
転職先の入社スケジュールの都合や家庭の事情など、やむを得ない状況を除き、柔軟に退職日を設定できそうなら繁忙期に辞めるのは避けたほうが無難です。通常業務が忙しいなかでは、引き継ぎがうまく進まない可能性が高いうえに、繁忙期に人材が抜けることで大きなトラブルにつながりやすいリスクも考えられます。また繁忙期中で引き継ぎがうまくできていないと、自分が退職してから問題が起きてしまい、前任に詳細を確認できないがゆえに多大な迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。できるだけ円満に、前職の会社とも良好な関係のまま仕事を辞めたいのであれば、社内の状況にもなるべく配慮して退職日を調整するのがベストです。
まとめ
基本的に退職日は、従業員自身で自由に設定できるのが原則です。ただし退職するタイミングによって、必要な手続きや収入面に影響する部分もあり、なるべく損しない時期に調整したほうがいいケースもあります。もちろんそれだけでなく、転職後でも元の会社と何かしら取引が発生する可能性も考えるなら、なるべく円満に退職できるタイミングに配慮するのが無難です。退職日の決め方に迷う際には、ぜひ本記事も参考に検討してみてください。