
職場でのパワハラに悩んでいる時、「周りにバレたくない」「心配させたくない」などと感じてしまい、誰にも頼れないこともあるかもしれません。とはいえ一人で問題を抱え込んでしまうのも、心身の健康状態を害するリスクもあり、できれば解決を図りたいものです。そこで今回は、職場でパワハラを受けた時に活用できる、具体的な相談窓口を詳しくご紹介。また過去の被害への対処法も、あわせて解説していきます。
近年のパワハラの実態は?認定されないケースもある?

厚生労働省の調査(※1)によれば、職場でのパワハラに関する相談があった企業において、過去3年間のうち7割以上の案件で「該当事案があった」と回答しています。最近では社会的にパワハラ被害が問題視されていることもあり、多くの場合において、職場内での被害相談が認められている状況です。
(※1)厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査(令和5年度)」
パワハラ被害を定義付ける3つの条件
政府では職場内でのハラスメント被害への対処に向けた、「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」を制定し、事業主に対して防止措置を求める規定なども設けています。そのなかでは、法的にパワハラを認定する定義も明記されており、次のような条件を提示しています。
● 当事者間で優位性を明確に判断できる関係がある
● 業務上において必要かつ相当な範囲から外れた言動
● 精神的・身体的苦痛により適切な労働を阻むような被害
法律上のパワハラとは、明らかな優位性が認められる関係のもと、業務に無関係もしくは不適切な行為によって甚大な害を与えるものを指します。ちなみに優位性のある関係とは、上司と部下・先輩と後輩をはじめ、経験値の差が大きい同僚間なども該当します。また加害の内容自体は、さまざまな要素からの総合的な判断を要するため一概にはいえませんが、社会通念上から逸脱した言動が見られる時にはパワハラとされます。
職場でパワハラを受けた場合の相談先は?

職場でのパワハラ被害に遭った時には、まずは各種専用窓口や専門家を頼りにするのがおすすめです。いずれも秘密厳守の匿名で対応してもらえるので、パワハラ被害への適切な対処をするためにも、次のような相談先に話を聞いてもらうとよいでしょう。
勤務先で設置されている専用窓口
近年では厚生労働省による指針として、各事業主には、職場におけるパワハラ対策への取り組みを義務化しています。こうした措置として、社内での専用窓口をはじめ、パワハラ被害の相談に対応する体制整備が必要とされています。
なお勤務先により形式は異なるため、「相談窓口」として明確になっていないかもしれませんが、パワハラ専用の問い合わせ先を設けているのが基本です。例えば人事・労務・総務といった各部署や管理職、担当委員会など、さまざまな形式で設置されています。もし職場でのパワハラに悩んでいるのであれば、早急な対処法として、まずは職場内の相談窓口を活用する方法も考えられます。
外部で利用できる労働・法務関連の専用窓口
職場内で相談するのが難しそうであれば、外部の専門窓口に相談する方法もあります。なおパワハラ被害の相談を受け付けている、労働・法務関連の専門窓口としては、次のような種類が見られます。
総合労働相談コーナー
「総合労働相談コーナー」は、各都道府県にある労働局に設置されている窓口です。紛争解決援助制度により、労働局長から事業主への助言・指導や、場合によってはトラブル解消に向けた専門機関へのあっせんをしてもらうことも可能。専門機関(紛争調整委員会)へのあっせんにより、当事者同士を仲介してトラブルに対処する、労働問題のプロを通じて解決してもらえます。
ちなみに利用できるのは、土日祝・年末年始を除く、平日の朝から夕方頃までとなります(各局により異なる)。なお公的機関につき、相談から紛争解決まで、無料で対応してもらうことができます。
各都道府県の労働委員会
個別労働紛争のあっせんにも対応している、厚生労働省による公的機関です。各委員会などに登録されている専門家を紹介してもらい、トラブル解決の仲介を申し出ることが可能。各地域の委員会ごとに異なりますが、なかには専用のWebフォームやメールなどのオンライン申請に応じている場合もあり、時間に関係なく相談できるケースもあります。もしくは平日夜間や土曜に受付をしている地域もあるため、総合労働相談コーナーへの問い合わせが難しい時に活用しやすいことも。いずれも相談からあっせんまで、無料で対応してもらうことができます。
みんなの人権110番
パワハラをはじめとした人権問題を取り扱う、法務局が運営する専用窓口です。被害内容の調査をはじめ、状況に応じて救済措置をしてもらうことができます。なおパワハラが認められる際には、関係機関への相談・法的立場からの助言や、勧告・和解に向けた調整などに対応してもらうことも可能。なお受付時間は、平日8時30分~17時15分で、Webサイトからはインターネットでの相談窓口も開設しています。こちらも公的機関につき、無料での相談ができます。
法テラス
法テラスは、法務省管轄のもと、独立行政法人「日本司法支援センター」が運営する専門機関です。全国各地に相談所があり、法律関連のあらゆる問題の相談対応をおこなっています。
法テラスでは、同機関に所属する弁護士に直接相談できるため、パワハラなどのトラブル解決が迅速に進みやすいのも特徴。ただしここまでの公的機関とは異なり、無料相談を利用できるのは一定の収入・資産基準の条件に該当する場合のみで、1回30分×3回までの制限もあります。まずはフリーダイヤル・メール・チャットから、ご自身の状況に応じて、どのような利用方法ができるのか問い合わせてみるのがおすすめです。
特定社会保険労務士
労務分野の専門家となる社会保険労務士のうち、依頼者の代理人として、さまざまな裁判外紛争解決手続(ADR)に対応できる特別資格のプロです。裁判外紛争解決手続(ADR)とは、労務関連のトラブル時に事業主と労働者を仲介して双方の意見を取りまとめ、中立な立場から和解案を提示するものです。
どちらも了承して同意に至れば、法的効力を持つ和解契約書のもと、適切な対処をしてもらうことが可能。なお個人的に特定社会保険労務士を探すのが難しければ、厚生労働大臣が認可する公共団体「社労士会労働紛争解決センター」による、相談窓口を活用する方法もあります。「社労士会労働紛争解決センター」では、はじめに無料での電話相談ができ、その後の手続き費用もリーズナブルに抑えられています。金銭面で不安な時でも活用しやすい窓口です。
弁護士
パワハラをはじめ、法的手段をもとに、さまざまなトラブルに対応できる専門家です。問題解決に向けた証拠収集や交渉など、パワハラ被害に対する和解や賠償請求などを代行してもらえます。もちろんパワハラを明確に立証する必要はあるものの、被害による甚大な損害(精神疾患の発症や後遺症など)が認められる場合、慰謝料や示談金を求められる可能性も。このように弁護士への相談により、深刻なトラブルの解決に向けた調停や訴訟などをおこなうことも可能です。
なお民間の弁護士事務所では、基本的には法律相談には一定の料金がかかるものの、初回無料としている場合も多くあります。もちろん実際に依頼するとなれば、まとまった費用は発生するが、パワハラ認定の判断などに悩む時には一度相談してみるのもいい方法です。
過去に起きたパワハラ被害の対処法はある?

民法上の消滅時効はあるものの、過去に受けたパワハラに関しても、事業主または加害者に対する損害賠償などの請求は可能。損害の度合いなどに応じて異なりますが、一定期間内であれば、パワハラ被害への対応を求められるケースも考えられます。
ちなみに民法上の消滅時効とは、仮にパワハラなどによる損害賠償を請求された際に、一定期間が経過していればその責任を拒否できる仕組みを指します。長期間にわたって、損害賠償を求められる権利が行使されなかった事実に、権利の有効性を統合させるものです。なおパワハラによる損害賠償を主張する権利には、いくつかの種類があり、消滅時効の期間にもそれぞれ違いがあります。
過去のパワハラ被害を主張できるケース
パワハラによる損害賠償を求めるにあたり、被害者が追及できる違反性としては、大きく分けて2つが存在します。具体的には、おもに次のような事象に対し、損害賠償の請求を主張できます。
<事業主による債務不履行>
(例)
● パワハラの被害を訴えたにも関わらず、適切な対応がされなかった
● 職場内で公然にパワハラ行為が横行しながらも、黙認・放置されていた(オフィス内や会議中など)
<当事者または事業主による不法行為>
(例)
● パワハラと認定される言動がおこなわれた(嫌がらせ・暴力・暴言・名誉棄損・疎外・過度な要求 など)
● 職場ぐるみでのパワハラ加害が起きていた
※単独の従業員によるパワハラでも、事業主による連帯責任が発生
実際にパワハラをしていた加害者だけでなく、その行為に対する安全配慮義務などを果たしていない、事業主にも損害賠償を求めることができます。
過去のパワハラ被害における消滅時効
債務不履行や不法行為が認められる場合、事業主や当事者にパワハラ被害を訴えることができますが、それぞれで以下のような消滅時効も設けられています。
<事業主による債務不履行>
● 賠償請求権利を認知してから5年
● 被害を受けている時期から10年(生命・身体侵害をともなう場合は20年)
※いずれか時効成立までの期間が早い時期
<当事者または事業主による不法行為>
● 被害または加害者を認知してから3年(生命・身体侵害をともなう場合は5年)
● 被害を受けている時期から20年
※いずれか時効成立までの期間が早い時期
なお生命・身体侵害とは、パワハラによって心身状態に大きな支障をきたしている状態を指します。例えばうつ病・適応障害・PTSDなどの精神疾患や、暴力によるケガなどが生じている時には、生命・身体侵害が起きているといえます。
ちなみに消滅時効のタイミングは、さまざまな角度からの解釈があり、判断が難しい部分もあります。過去のパワハラ被害で悩んでいる時には、まずは専門家に相談してみるのが無難でしょう。
過去のパワハラ被害は外部の専用窓口や専門家への相談が可能
たとえすでに退職している職場でのトラブルであっても、前述にあるような外部の専用窓口や専門家であれば、パワハラ被害に関する相談が可能。再度簡単に整理してみると、次のような相談窓口があります。
● 総合労働相談コーナー
● 各都道府県の労働委員会
● みんなの人権110番
● 法テラス
● 特定社会保険労務士
● 弁護士
こうした各種窓口に相談する際には、パワハラの状況や被害を立証するためにも、できるだけ証拠を集めておくのがおすすめ。例えば、メールやチャットでのやり取り・日報などでの記録・勤怠管理表をはじめ、もし録音や録画のデータがあれば用意しておきましょう。また実際に心身症状が出ている場合には、病院の診断書も準備しておくと、法的手段も取りやすくなります。過去の証拠を振り返るのは難しいかもしれませんが、当時の日記やSNSの投稿などでも問題ないので、何かしらパワハラ被害の事態がわかるものを集めておくとよいでしょう。
まとめ
人手不足による厳しい労働環境などの社会問題が見られるなかで、職場の状態が悪化し、パワハラが発生する事態も多くなってきています。一方で社会全体として、コンプライアンス意識が高まっていることもあり、現代はパワハラに向けた対処も重視されやすい状況でもあります。こうした背景から、パワハラ被害を相談できる窓口も多数設置されるようになり、いざという時に頼りやすい体制も整ってきています。また現状でのパワハラだけでなく、過去の被害を相談できる窓口もあるため、悩んでいる時には活用してみることをおすすめします。