新卒1年目といえば、晴れて社会人をスタートしたばかりの時期ではありますが、さまざまな事情から転職を考えるケースも珍しくありません。とはいえ新卒1年目の段階では、「根気がないと思われてしまいそう」「自分だけ努力できていない気がする」など、転職を踏み出すにしても何かと心配が多いもの。まだ働きはじめて日が浅いからこそ、なんとなく自分のなかで「甘え」だと感じてしまうかもしれません。しかし実際には、新卒1年目の転職ならではの利点も多く、いっそ早めに動き出したほうが採用につながりやすい部分もあります。そこで今回は、新卒1年目の転職の実態について、メリット・デメリットなどを中心に解説していきます。
新卒1年目の1割以上が短期転職を経験している
厚生労働省の調査(※1)によれば、新卒3年目までの離職率は、34.9%(令和3年3月卒業者/大卒)。そのうち1年目で離職した新卒者の割合は、12.3%との結果が出ています。このように新卒1年目の離職者は一定数存在するうえに、だいたい3人に1人以上は、3年以内の短期転職を経験している実態があります。
従来では新卒一括採用からの終身雇用が一般的でしたが、近年ではこうした仕組みが少しずつ変化し、転職して理想の働き方を叶えるケースも増加。特に社会人未経験からのスタートになる新卒人材では、いざ働き出したからこそわかることも多く、早期のうちに転職を考えるのも決して不思議ではありません。
また新卒1年目で転職を検討する背景は、「想定していた仕事と大きく違う」「思うようなキャリアを積めそうにない」など、個人によってさまざま。場合によっては、あまりに過酷な労働環境や厳しいノルマ・ハラスメントなど、耐えようのない現状に置かれていることもあるでしょう。こうした状況で無理に続けてしまうと、心身の不調を招いて、日常生活に支障をきたしてしまうリスクも。転職が頭をよぎるような時には、ただ単純な「甘え」だと考えすぎずに、冷静になぜ仕事を辞めたいのか整理してみることをおすすめします。
(※1) 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」
若年層の転職率は男女差もほぼなく高い
大まかに新卒1年目(大卒)となるのは、だいたい20代前半~半ばくらいの世代で、他の年齢層よりも転職入職率は高い傾向にあります。ちなみに厚生労働省の調べ(※2)では、当世代の転職入職率として、次のようなデータも出ています(パート労働者は除く)。
【男性】
20歳~24歳/15.0%
25歳~29歳/13.4%
【女性】
20歳~24歳/15.9%
25歳~29歳/14.5%
これが30代以降の世代になると、男女ともに転職入職率は1割に満たない比率に下がるなかで、20代では多くの人材が流動していることがわかっています。なお男女差もほとんどなく、新卒1年目を含めた若年層で、転職を経験するのもさほど珍しいケースではないといえます。
新卒1年目の短期転職で得られるメリット
では実際に、新卒1年目の早期から転職に向けて動き出すことで、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
人材需要の高い第二新卒枠での採用に期待できる
一般的に転職市場では、新卒入社から3年以内の人材を「第二新卒」と呼び、なかには積極的に採用している企業も多く存在しています。第二新卒の場合、多少の社会人経験はあるものの、まだ年数は浅いことから先入観や固定観念も薄い傾向にあります。そのため新たな知識やスキルを吸収しやすい育成枠として、あえて第二新卒を狙って採用している企業も少なくありません。
また前述にもあるように、新卒入社からの早い段階で転職する人材も一定数います。こうした背景もあり、早期からの転職者の補充として、同じような若手層の第二新卒を採用しているケースも。新卒1年目の時期だからこそ、第二新卒の人材を求める企業からの需要が高く、内定につながりやすい一面があります。
新卒採用時と似たような育成を受けやすい
新卒1年目というと、企業側としても即戦力ではなく、今後の成長を見越した育成枠として採用するのが一般的です。現時点における知識やスキルよりも、これからの社内教育によって能力を伸ばしていく、ポテンシャルに期待して採用するケースが多々見られます。もちろん社会人経験のない新卒人材も、同じようなスタンスで採用するのが通常。そのため多くの場合、新卒人材も新卒1年目からの転職者も同様に、ビジネスの基礎から教育していくことになります。早期から転職を決めることで、ビジネスパーソンとしての経験値が少ないからこそ、手厚く育成されやすい部分もあります。
長期的なキャリア形成ができる
新たな仕事をはじめるのが早ければ早いほど、当然ながら、その職場で積むことができる経験年数も長くなります。極端な例ではありますが、新卒入社10年目の段階よりも、思い切って1年目のうちに転職したほうが次の職場では長期的なキャリアを築くことが可能。何年か経ってから転職するよりも、早期に次のステップへ進むことで、結果的に新たな職場でのスキルアップや昇格が早くなる可能性も考えられます。現職において、何か違和感や疑問を抱くようであれば、その時点で転職の選択肢を考えてみるのもよいでしょう。
新たな分野へのチャレンジがしやすい
新卒1年目の場合、新卒人材とほぼ似たような育成枠での採用となるため、さほど実践的なスキルなどは求められないのが基本です。そもそも社内での教育を前提としているため、例えば専門的な知識や技術が必要とされる仕事でも、新たにチャレンジしやすい一面も。入社後にノウハウを身につけられる体制があることから、その分野に精通していなくても、採用してもらえるケースもあります。新卒1年目の早いタイミングだからこそ、次の職場でもじっくり学べる時間があり、まったくの未経験の業種・職種で採用される可能性が高いのも利点でしょう。
新卒1年目の短期転職で注意したいデメリット
新卒1年目の短期転職では、さまざまなメリットが見込める一方で、気を付けておきたい難点も少なからずあります。早い段階での転職だからこそ、次のような注意したいデメリットも頭に入れておきましょう。
失業手当や賞与の対象にならない可能性がある
就職時には、雇用保険に加入するのが一般的で、なおかつ離職すれば失業手当の受給が可能です。ただし自己都合(病気・ケガ・倒産・解雇などを除く)による離職では、勤続1年以上でないと、失業手当の支給対象にならないのが原則です。新卒1年目となると、入社1年に満たないため、失業手当を受け取るのは難しいでしょう。とはいえ、現職の影響で疾病を患っている場合などには、失業手当が受給できるケースも。失業手当の要件は、ハローワークなどで十分に確認しておきましょう。
また賞与に関しては、企業によって異なりますが、就業規則などで支給条件が決められていることもあります。例えば「入社1年未満では50%支給」など、社歴に応じた規定が設定されていることも多数。新卒1年目のように、入社後からの年数が浅いと、減額または支給対象外になってしまう可能性もあります。賞与は収入面にも大きく関わるため、支給の条件次第では、離職のタイミングは検討したほうがいいパターンもあります。
早期離職の懸念を招きやすい
やはり新卒1年目の転職では、日の浅いうちに離職している分、「次も同じように早く辞めてしまうのでは」との懸念を招きやすい一面もあります。とはいえ、やむを得ない事情や明確なビジョンをともなう転職なら、企業側としても自社での早期離職の不安は解消しやすくなります。もちろん「なんとなくいやになったから」など、あいまいな動機だけでは、採用に至るまでの信用にはなかなかつながりません。新卒1年目の転職では、早期離職になった理由をしっかりと伝えることも重要です。
再就職までに時間がかかってしまうケースもある
場合によっては、自分のやりたい仕事が見つけられなかったり、マッチする企業になかなか出会えなかったりする可能性も少なからずあります。そうなると転職活動に時間がかかってしまい、再就職までの期間が長くなってしまうケースも。なお新卒1年目では、先ほども出てきているように、失業手当が受け取れないことも考えられます。再就職までに期間が空いてしまうと、収入面も不安定になりやすいため、転職活動の進め方には注意が必要。個人の事情にもよりますが、できれば現職で働きながら、同時に転職活動をしていくのが無難でしょう。数ヶ月単位など、ある程度の期間が必要なことも想定しながら、転職活動に入っていくことをおすすめします。
新卒1年目の短期転職を叶えるためのコツ
では新卒1年目の短期転職をスムーズに実現するために、頭に入れておきたい重要なポイントもご紹介していきます。
転職を考えた理由を振り返って整理しておく
新卒1年目の転職では、勤続期間の短さから、「仕事があまり長く続かないタイプなのかもしれない」というように見えてしまいがちです。ただし新卒1年目から転職へ至った理由に、企業側として納得さえできれば、貴重な若手人材として採用されやすい一面もあります。きちんと早期に転職を考えた理由を伝えるためにも、まずはなぜ仕事を変えようと感じたのか、具体的なきっかけや経緯を振り返っておきましょう。転職したい根拠を明確にしていくことで、自分自身の考え方が把握しやすくなり、志望動機などにもつながりやすくなります。大前提として、はっきりとした目標を持った転職であることを十分に伝える意識をしておきましょう。
自己分析や企業研究は徹底して進めておく
場合によっては、ネガティブな背景から転職を考えるケースもあるかもしれませんが、例えば志望動機や自己PRなどは前向きな内容にするのがベスト。転職の目的がただ不満を解消するだけに見えてしまうと、「職場を変えられるなら他の会社でもいいのでは?」などの懸念を抱かせてしまう可能性もあります。もちろん自分の素直な考えを伝えることが大切ですが、「こんなことを実現したいから、この会社で働きたい」など、その企業でなければならない理由を示すことも重要です。そのためにも、自分が本来どうしたいのか・何がやりがいに感じるのかなど、徹底した自己分析が不可欠。さらに次に目指したい企業の情報を十分に調べておくことで、なぜその会社を選んだのか・自分がどう活躍できるのかなど、より明確なアピール内容につながりやすくなります。こうした自己分析や企業研究も、きちんと採用されるために欠かせないポイントです。
何年か先の将来まで見据えたキャリアプランを立てておく
しっかりと長期的なキャリアが築ける職場を見つけるためには、長い目で見た理想像をイメージしておくことも重要。明確なキャリアプランがあることで、きちんと将来的な自己実現にもつながる職場選びができます。無事に入社できたとしても、短期的なビジョンしか持っていないと、何年かしてから「本来やりたい仕事ができていない」などの違和感を覚えてしまうことも。何年後かに後悔しないためにも、例えば「3年後には○○の業務で△△をして、5年後には□□がしたい」など、年単位のキャリアプランを想定しておくのがおすすめです。こうしたキャリアプランは志望動機などにも直結するので、大まかなイメージだけでも持っておくようにしましょう。
転職エージェントに相談してプロの力を借りる
新卒1年目の転職で、どう動き出すべきなのか悩んでしまう時には、求人検索から選考対策までサポートしてもらえる転職エージェントを活用するのが安心です。転職のプロとして、個人のビジョンや能力などに適した企業とのマッチングをはじめ、初歩の段階からフォローしてもらうことが可能。場合によっては、一般公開していない求人を紹介してもらえるケースもあります。その他にも、内定獲得に向けたアドバイスなど、転職活動の全面的なバックアップを受けることができます。なかなか行動に移すのが難しい時には、一度転職エージェントに相談してみるのもおすすめです。
なお「オーダーメイド転職」では、三重県に特化した転職エージェントサービスを提供。地元優良企業とのマッチングなど、地域密着ならではの独自のネットワークを活かして、三重県での転職活動を手厚くお手伝いしています。三重県での転職をお考えの際には、ぜひ気軽にお問い合わせください。
まとめ
新卒1年目だと、入社からかなり早い段階にはなりますが、実際に転職をしている人も一定数存在しています。さらに新卒から入社3年以内の人材は、転職市場では第二新卒として重宝されている一面も。新卒1年目から転職を考えるのは、決して甘えではなく、現実的に考えられる選択肢の一つといえるでしょう。また新卒1年目の転職は、今回解説してきたようにさまざまなメリットがある一方で、注意したいデメリットも少なくありません。新卒1年目の時点での転職に迷っている際には、ぜひ本記事も参考に、じっくり検討してみてください。