採用時の応募条件として、高卒や大卒以上など、一定の学歴を必須としているケースは珍しくありません。さらに大卒以上の学歴を求める企業では、自社にマッチする人材の採用に向けて、内情的には出身大学も含めて選考基準で重視している場合もあります。なかでも志望者が多く、競争率が高くなりやすい大手企業に対しては、「偏差値や知名度の高い名門大学でないと入社できないのでは?」などの懸念を感じる人も少なくないでしょう。大前提として大手をはじめとした各企業の人事において、出身大学などの学歴だけで、採用の可否を判断されることは当然ながらありません。学歴に関係なく、大手企業を目指せるチャンスは誰にでもあります。そこで今回は「Fラン大学出身だし、特に大手企業に入るのは厳しいかも……」など、学歴に不安を抱えている時に、知っておきたい転職のポイントをご紹介していきます。
「学歴フィルター」で大手企業に入るのが難しく思える理由は?
出身大学が採用の可否に影響するような、いわゆる「学歴フィルター」が起こりやすいのは、就業経験のない学生から人材を選ぶ必要のある新卒採用時です。新卒採用では、基本的には社会人経験のない学生を対象に、自社で活躍できる人材を見極めなければなりません。そうなると実践的なスキルや知識ではなく、学生生活のなかで培ってきた能力や姿勢などにもとづく、入社後の成長性が採用の判断基準となります。
そうしたなかで学生生活においては、やはりウエイトを占めやすい経験となるのは学業と考えられることもあり、熱心に勉学に取り組んだことは高く評価されやすい一面も。競争率の高い大学への受験・合格ができるほど、意欲的に勉学に励める姿勢や目標達成を目指せる能力を持つ、ポテンシャルのある人材として採用する企業も見られます。このような背景もあり、有名大学出身のほうが、採用の可能性は高くなるように感じやすいといえます。
また新卒採用では、一度にまとめて数多くの人材を迎え入れるケースもあり、学生からの応募数が殺到する場合も。特に大手企業では、認知度の高さなどから学生からの人気が集まりやすく、多数のエントリーが集結しやすい部分もあります。こうした際にデータ的に人材を精査する意味で、客観的な判断基準になりやすい出身大学を一定条件として、次の選考に進める学生を選んでいく例も少なくありません。
出身大学に関係なく大手企業に転職できるチャンスはある
前述のように新卒採用では、さまざまな理由から出身大学も選考基準となる傾向も見られやすいですが、中途の求人ではその実態は大きく変わってきます。中途採用の選考では、入社後の業務に直結するような、社会人経験も含めた評価がおこなわれます。新卒採用では、判断材料となる社会人経験がないため、入社後の育成を前提とした成長性が重視されやすくなります。その一方で中途採用では、即戦力として活躍できる、実践的なスキルや知識などが重点的に評価されやすくなります。そのため中途採用であれば出身大学などに関係なく、今までの職歴で培ったノウハウを活かして、新卒時に比べて大手企業を目指せる可能性は高くなりやすい一面もあります。大手企業であっても、これまでのビジネスの実績を評価基準とする中途採用なら、出身大学なども含めて学歴を問わない選考をしているケースも多く見られます。
学歴問わず大手企業を目指しやすい業界や職種
業種や職種によっては、出身大学などの学歴に関係なく、幅広い層から積極的に人材を採用している場合もあります。こうした業種や職種における転職であれば、これまでの実力次第で、大手企業を目指せる可能性も高いといえます。ちなみに学歴問わず、大手企業を狙いやすい業種や職種としては、次のような例が挙げられます。
<IT業界>
システム開発やプログラミングなど業界特有の専門技術を必要とするため、そもそも学歴に関係なく、入社後から身につけることを前提としている会社が多数。また人手不足が社会問題となっているうえに、今後の業界ニーズも非常に高く、大手企業も含めて学歴問わず多くの人材の確保を求める傾向にある。
<不動産業界>
IT業界と同じく、業界ならではの専門性の高いスキルや知識が求められやすく、学歴を問わず入社後の育成を前提としているケースが多い。また常に社会的に安定した需要があり、人材ニーズも高く、学歴に関係なく実力次第で採用されやすい。
<メーカー>
日本の主要産業であり、なおかつ製造から営業まで幅広い職種が設定されやすく、人材を必要とするポジションも多数。大手企業を含めて、人材ニーズが高く、学歴に関係なく転職を目指しやすい傾向がみられる。
<サービス業>
対人スキルを求められる業務が多く、学歴をはじめとした知識や能力よりも、これまでの経験に基づく人間性などが評価されやすく大手企業を目指せるチャンスも多い。
<営業職>
コミュニケーション能力を中心とした対人スキルが求められやすく、学歴に限らず、さまざまな経験や人間性を活かしやすい職種。学歴以外の能力が評価されやすく、また成果・実力主義で、これまでの経歴に関係なく活躍しやすい一面もある。
大手企業への転職を成功させるためのポイント
では実際の転職において、出身大学などの学歴にあまり自信がないなかでも、大手企業を目指したい場合に知っておきたいポイントを解説していきます。
中途採用者の割合が高い大手企業を探す
大手企業のなかには、新卒から採用して社内で育成を図ることで、長い年月をかけて自社の文化や価値観などが根付いた幹部候補を育てたいと考える会社もあります。こうした新卒を中心とした人材採用をおこなっている場合には、選考基準として学歴が含まれやすい一面も。一方で中途採用の比率が高い大手企業では、即戦力につながる職歴や実績が重視されやすく、学歴に関係なく実力主義の評価を受けやすい傾向にあります。中途採用をメインにしている企業なら、新卒採用で見られる出身大学のブランド感の意識が比較的薄く、学歴を基準としていないケースも多数。このような中途採用者の割合が高い大手企業では、学歴ではなく経験や能力次第で、入社を目指しやすいといえます。
自分の職務経歴を活かせる求人を選ぶ
中途採用では、将来的なポテンシャルだけでなく、今までのビジネスで培った能力や実績を評価してもらえます。これまでの職務経歴を存分に活かして活躍できるポジションの求人なら、即戦力として高く評価されやすく、学歴に関係なく大手企業で採用されるチャンスも。担当業務や役割に注目して、しっかりと自分のスキルを発揮できる求人を見極めて応募することで、大手企業への入社を目指せる可能性も高くなります。中途採用では、学歴以外の強みを見てもらいやすいからこそ、自分の実力を思いっきり出せる求人を探してみることも重要です。
大手のグループ会社も検討する
もし大手企業を目指す動機として、福利厚生や待遇のよさを求めているなら、各グループ内の会社も視野に入れて検討してみるのがおすすめ。大手グループに属している会社であれば、組織全体としての経営基盤をもとに、その母体企業と同じような福利厚生や待遇が用意されているケースも見られます。たとえ一般的に名は知られていなくても、好条件で勤務できる手厚い職場環境が整っている優良企業は数多く存在しています。特に大手グループ内の会社では、こうした働きやすさが揃っている場合も多々あり、決して有名ではなくても安定して活躍しやすい企業も多数。大手企業の安定感を求めて転職したい時には、このようなグループ会社に注目してみるのもいい方法です。
選考に向けた徹底した対策に取り組む
学歴以外の要素をしっかりとアピールして、大手企業での採用を目指すのであれば、十分な自己分析やキャリアプランニングによる選考対策が欠かせません。やはり採用に向けた高い評価を得るには、自分の強みがしっかりと伝わる、志望動機や自己PRなどを作成しておくことも重要です。これまでの経験や実績をもとに、入社後の活躍のイメージを明確にすることで、確かな戦力となる人材であることを示すことができます。入社後にどう貢献できるのか、どのようなポジションで利益をもたらすのか、自分を採用するメリットを企業側に明示できるように準備しておきましょう。
まとめ
特に新卒採用においては、一部の企業では、出身大学などの学歴による選考基準が設けられているケースも見られます。なかでも応募数の集まりやすい大手企業では、効率的に人材を精査する目的で、あえて学歴による選考基準を設定している場合もあります。とはいえ新卒も中途も含めて、学歴だけで採用するかどうか決定されることはありません。もちろん出身大学などの学歴が評価の対象になることもありますが、それだけでなく、さまざまな能力や人柄などを総合して採用の可否を決めるのが基本です。さらに新卒に比べると、中途採用のほうが職務経験もあることから、学歴以外で評価されやすい要素も数多くあります。学歴以外にアピールできる実力があれば、大手企業への転職を目指せる可能性も十分に考えられます。出身大学に不安があるなかでも、大手企業を目指したいとお考えの際には、ぜひ本記事も参考に転職の準備を進めてみるのもよいでしょう。