「やってみたい仕事がある」「新たに進む方向性が決まってきた」など、転職のイメージが湧いてきたら、次に考えていきたいのはタイミングです。転職する時期が決まってくれば、求職活動もはじめやすく、目標を持って動きやすいでしょう。とはいえ、前職や自分の身の回りの状況などにもよりますが、転職するタイミングはなかなかつかみにくいもの。すでに志望する企業などがあれば問題ありませんが、これから求職活動をはじめる際には、いつ頃からスタートさせるべきなのか悩んでしまいがちです。そこで今回は、何月入社を目指すのが最適なのか、おすすめできる転職のタイミングを解説していきます。
決算翌月の4月・10月・1月入社を目指した転職がおすすめ
一般的な企業では、3月・9月・12月を決算期として、4月・10月・1月から新年度開始とするケースが多く見られます。こうした決算期の周辺では、新年度に向けた人事がおこなわれやすく、新規採用を進める企業が多くなる傾向にあります。
厚生労働省が発表している「一般職業紹介状況」(※1)でも、求職者1人あたりに対する求人率(有効求人倍率)は、1月・2月・3月と11月・10月・12月にかけて上昇する様子が見られています。また7月・8月も有効求人倍率が比較的高く、いずれも転職活動をする時期として適しているといえるでしょう。こうした点からも求職活動のゴールとして、4月・10月・1月入社を目安にしておくのがおすすめです。
(※1)厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年5月分)について」
第二新卒などの若手層が有利になりやすいのは4月入社
4月入社は、次世代の育成に向けて、新卒人材が多く採用されやすい時期です。もちろん企業によって異なるものの、ベテランの中堅層よりも、これから経験を積んでいく若手層の採用が優先されやすい傾向にあります。4月入社を目指す転職は、第二新卒をはじめ、20代などの若手層で有利になりやすいといえます。
中堅以上の即戦力採用がおこなわれやすいのは10月・1月入社
10月・1月入社は、新卒の社会人の卒業・入社シーズンからは外れることもあり、即戦力の人材を中心とした新規採用がおこなわれやすい時期です。中堅以上の経験者が求められやすく、例えばマネジメントなどの高度なスキルや、専門性の高い知識・技術などが評価される求人が増えやすいタイミングでもあります。リーダー層などの中堅クラス以上の求人を探したい場合には、10月・1月入社を目指すのがおすすめです。
4月・10月・1月入社に向けた転職によるメリット
では実際に、4月・10月・1月入社を目指す転職では、具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
採用につながる可能性が比較的高くなりやすい傾向にある
決算後の新規採用は、次年度に向けた新たな人員配置や人事異動にともなう場合が多く見られます。例えば、人事異動の都合で空きのポジションが出たり、新しいプロジェクトの推進で人手が不足していたりなどのケースも。このように人材確保の必要性が高いタイミングのため、企業側の採用ニーズが高く、比較的内定をもらいやすい傾向にあります。求職者1人あたりに対する求人数が増えやすい分、採用率も高くなりやすいのがメリットです。
求人数が多く転職先の選択肢が豊富にある
決算後の新年度の開始に向けて、人材ニーズが高くなる時期のため、数多くの企業から求人が出されるタイミングです。多数の企業において、さまざまなポジションの新規採用がおこなわれやすく、求職者側の選択肢も幅広くなりやすい傾向が見られます。人材の需要が増えている分、場合によっては、あまり見かけない職種やポジションの求人が出ていることも。未経験からチャレンジできたり、珍しい業務に挑戦できたりする求人が見つかることもあり、新たな可能性を広げられるケースもあります。今まで自分では想定していなかった仕事に出合えるチャンスなどもあり、新しいキャリアをはじめやすいのも利点です。
同時期に入社する仲間ができやすい
求人数が増えやすいタイミングなので、当然ながら同じ時期に採用される人材も多くなります。もちろん各企業の採用状況によって異なるものの、似たような時に何名か入社するケースも多々見られ、同期の仲間ができやすいメリットもあります。新生活をはじめるタイミングで、同期の仲間がいると心強いうえに、新たな環境にも慣れていきやすいのも利点でしょう。
10月や1月入社ならボーナスの支給後の転職がしやすい
一般的に年2回の賞与が出る会社であれば、7月や12月が支給月となるケースが多々見られます。そのため10月や1月入社を目指した転職であれば、前職での賞与が支給されたうえで、次の職場にいきやすいメリットがあります。基本的に賞与は、勤続年数なども含めた個人の勤務態度や業績をもとに金額が決まることが多く、入社して日が浅いとまとまったボーナスにならないことも。例えば7月に賞与が出る会社に、6月入社で転職した場合、そもそも夏のボーナス自体が支給されないこともあります。しっかりと収入面も考慮したいのであれば、こうしたボーナスの支給時期との兼ね合いも見ながら、転職のタイミングを考えるのがおすすめです。
4月・10月・1月入社を目指す転職にともなうデメリット
ここまでに見てきたように、4月・10月・11月入社に向けた転職にはさまざまなメリットがありますが、注意しておきたい部分も少なからずあります。では以下からは、4月・10月・11月入社を目指す転職において、気を付けておきたいデメリットも見てみましょう。
人気の求人では競争率が高く採用難易度も上がりやすい
年度の変わり目は、求人が増えると同時に、転職する人材も多くなるタイミングです。求職者も増加しやすいので、例えば人気の高い職種や企業などの求人には、多数の応募者が集中しやすい一面もあります。場合によっては、自分の理想とする仕事でなかなか採用されず、希望の職場に転職するのが難しいケースも。求人数自体は多くなりやすいものの、人気が集まりやすい求人では、採用難易度が高くなりやすい点には注意が必要です。
連休が入りやすく引き継ぎの時間が取りづらいケースも
特に10月や1月入社を目指す転職をする際には、退職の時期と連休が被りやすい一面があります。10月入社なら9月のシルバーウイーク、1月入社なら年末年始というように、退職・入社に近いタイミングで長期休暇が入りやすい時です。長めの連休がある分、業務上の時間も確保しづらいため、退職前の準備がきちんとできるように早めから対応しておく必要があります。問題なく退職までに間に合うように、計画的に、業務の引き継ぎや身の回りの整理などを進めておくことも重要です。
年末調整の対応がうまくできない可能性もある
年末調整は、あらかじめ各月で天引きされていた、概算の所得税の過不足分を精算する手続きを指します。毎年の年末に所得税額が確定するため、12月の給与支払い時に、過不足の調整をおこなうものです。例えば前職の会社で12月中までに給与が支払われる場合には、そのまま転職前の職場で年末調整をしてもらうことが可能。もしくは転職先で12月中までに給与が支払われる場合には、前職の会社で発行された源泉徴収票をもとに、新しい職場で年末調整ができます。
ただし特に年末調整の時期に近い1月入社では、退職のタイミング次第では、自分で確定申告をしなければならないケースも。仮に1月入社に向けて10月に退職した場合、前職でも転職先でも12月中の給与支払いがないため、自分で確定申告をして年末調整をする必要があります。12月に比較的近いタイミングで、なおかつ前職での退職時期から少し期間を空けて転職先に入社する際には、こうした年末調整も考慮しておきましょう。
転職のタイミングを決める際に考えておきたい注意点
転職がうまく進みやすいタイミングだけでなく、退職して困らないために時期を調整することも大切です。では転職のタイミングを決めるにあたり、考慮したいポイントも解説していきます。
できるだけ円満に退社できる時期に調整する
急な退職は、業務の引き継ぎなどが間に合わないリスクが想定されやすいため、突発的な転職にならないように時期を調整しましょう。もし転職を決めたのであれば、できるだけ早めに上司などに相談しておくことも重要です。また前職における繁忙期のタイミングでの退職や転職も、なるべく避けたほうが無難。前職の企業側としても、忙しい時期に慣れた人材が抜けてしまうのは、大きな痛手となります。その他にも、新しい役職や業務・プロジェクトなどを任された直後も、すぐには転職しないのがベスト。有益な人材として配置したにもかかわらず、早期の段階から欠員になってしまうと、新たに補充するのは難しいでしょう。なおかつ新しい人員配置後に退職した事実は、転職したい会社からも「責任感に欠けるのでは」などの懸念につながる可能性も。いくら退職するといっても、前職の会社との縁が完全に切れるわけではなく、場合によっては転職先の職場の顧客になるケースもあり得ることです。こうした点も考えて、きちんと円満退社ができそうな時期に調整して転職するようにしましょう。
退職から入社までの期間が空く際には税金の支払いにも要注意
例えば、退職してしばらく休んでから入社する場合などには、健康保険・年金や住民税の支払い方法が変わってきます。健康保険・年金でいえば、就職している期間なら、給与天引きで会社が支払っています。ただし一定期間は就職しないのであれば、自分で国民健康保険や国民年金の支払いをしていく必要が出てきます。また住民税は退職する時期にもよりますが、最後の給与や退職金から一括で支払うか、もしくは分割したい時には個人で直接納税するか選ぶことになります。いずれにしても、退職から入社までの期間が長くなりそうな時には、こうした税金の支払いも考慮しておくのが無難です。
まとめ
一般的に年度の切り替わりになりやすい4月・10月・1月は、各企業にとっても心機一転するタイミングで、転職して入社する時期としておすすめ。4月・10月・1月までの1~2ヶ月前の期間は、積極的に新規採用をおこなう企業が多く、求人数が増加しやすくなります。とはいえ現状としては、社会全体において深刻な人手不足が進んでいることもあり、年間を通して新規採用に向けた求人は数多くあるのも事実です。4月・10月・1月入社だけにとらわれず、前職の状況なども見ながら、自分にとって最適な転職の時期を決めていくのがベストでしょう。どのようなタイミングで転職すべきなのか、ぜひ本記事も参考に、じっくり検討してみてください。