今後の将来設計やキャリアプランを考えるなかで、「現状のままでは給与が上がりそうにない」「もっと稼げないと経済的に厳しいかも」など、収入面から転職を検討するケースは珍しくありません。そうした場合にもし多少は時間がかかっても、なるべく高収入を目指したいなら、資格を取得して転職する方法もあります。何かしらの資格を持っていることで、特定の分野に強いスキルや能力を明確に示すことができ、給与の高い求人でも評価されやすくなる効果が見込めます。そこで今回は、高収入を叶える転職につながりやすい、おすすめの資格とそれぞれの難易度について解説していきます。
転職に役立つ!稼げる資格の特徴は?
でははじめに、高収入を目指す転職にともなう資格取得に向けて、どの種類を取るべきか選ぶ際に知っておきたいポイントから見ていきましょう。
今後の高い需要が見込めて安定した市場がある
高収入を狙う転職で有利になりやすいのは、やはり市場としてのニーズが高く、なおかつ将来性のある業種・職種に関わる資格です。当然ながら需要のある仕事ほど採用につながりやすく、さらに今後も伸びていく分野で新たに経験を積むことで、この先のキャリアアップと同時に収入も高くなりやすい傾向にあります。具体例としては、現在のようなDX推進に関連するIT系や、少子高齢化にともなう福祉・医療系など。できるだけ安定した市場のある業種・職種で活用できる資格を取得しておくと、求人数が多く転職先としての選択肢も幅広くなり、より高収入の職場を選びやすくなります。
専門性が高く独占的に対応できる業務が多い
専門性のある資格ほど、そもそも保有者の母数も少なくなりやすく、人材としてのニーズも高くなりやすい傾向にあります。また専門性の高い資格を持っている分、対応できる業務の幅も広くなるため、能力やスキルとしての評価にも直結して給与水準も上がりやすくなります。なかにはその資格保有者でないと、担当できない業務規程を設けている種類もあり、こうした独占的な職務があるほど給与も高いのが特徴。つまり資格としての難易度が高ければ高いほど、高収入も狙いやすく、確かな安定性にも期待できるでしょう。具体的な例として、極論でいえば医師ですが、その他にも社会人から目指せる専門資格はいくつもあります。詳しくは後述でご紹介していくので、ぜひチェックしてみてください。
現職からのキャリアアップに直結しやすい
現職と同じ分野に関わる資格を取ることで、収入アップにつながる転職ができる可能性もあります。例えば現場で学んだノウハウを活かして、今の能力やスキルからレベルアップする資格を取ることで、上位のポジションに就ける転職ができるケースも。個人の技能を明確に示す資格と実務経験から、高い評価に直結し、幹部候補や管理職として採用されるパターンも考えられます。まったくの異業種ではなく、今までの経験に関連する専門資格を取ることで、高収入の転職先が選びやすくなる場合もあります。
【難易度別】転職で高収入を目指しやすい資格12選
ではここからは高収入を目指す転職におすすめできる、平均年収の高い専門資格をいくつか厳選してご紹介。それぞれの難易度に分けて、どのような資格なのか解説していきます。
【上級レベル】公認会計士
公認会計士は、おもに各企業が公表する財務諸表の監査を独占業務とする国家資格です。証券取引に関する法律から、上場企業などでは毎年の経営状況を示す、財務諸表の公開が義務化されています。この財務諸表の情報が正しいかどうか、信頼性の確保に向けて、専門家として調査・証明をおこなうのが公認会計士です。会計のプロとして非常に専門性が高く、比較的高収入も狙いやすい資格でもあり、平均年収は約747万円(※1)。ただし資格取得の難易度も高く、合格率は約7.4%(※2)と、かなりの難関ともいえます。ちなみに公認会計士は、実務経験などの受験資格がなく、新たに資格取得を目指しやすい一面もあります。とはいえ難しい専門資格にはなるので、取得に向けては、予備校や通信講座などの学習サービスを活用するのがおすすめです。
(※1) 厚生労働省「job tag」(職業情報提供サイト/日本版O-NET)
(※2) 日本公認会計士協会「令和6年公認会計士試験(論文式試験)の合格点及び合格率等について」
【上級レベル】税理士
税理士は、企業および個人の納税者に代わって、おもに税務署に向けた税申告や決算をおこなうことができる国家資格です。税務関連の各種手続きや、節税対策のアドバイスといった相談などの独占業務を担うことができる専門家でもあります。事業所得の確定申告など専門的な依頼を受けることができ、比較的収入も高く、平均年収は約747万円(※3)。なお税理士は、大前提として受験するための要件が設けられており、日商簿記1級などの専門資格または所定の学歴や職歴がないと受けることができません。もちろん今までの経歴や習得スキルなどに応じて異なりますが、場合によっては税務に関わる補助業務で実務経験を積んでから、資格取得を目指す必要が出てくるケースも見られます。こうした受験までのハードルが高く、さらに合格率は約16.6%(※4)の難関資格でもあります。税理士も独学ではかなり難易度が高く、予備校などで勉強しながら資格取得を目指すのが無難でしょう。
(※3) 厚生労働省「job tag」(職業情報提供サイト/日本版O-NET)
(※4) 国税庁「令和6年度(第74回)税理士試験結果」
【上級レベル】社会保険労務士
社会保険労務士は、企業における社会保険関連の各種手続きや、労務管理などをおもな独占業務とする国家資格です。企業で働く人材の安全衛生や、正しい労働環境を維持する専門家として、今後の高い需要が見込まれている職業でもあります。社会保険労務士も、専門性やニーズの高さから比較的高収入になりやすく、平均年収は約948万円(※5)。ただし試験の受験に向けて、さまざまな要件がある難関資格でもあり、こちらも取得までのハードルが高い一面も見られます。ちなみに社会保険労務士の試験合格率は約6.9%(※6)と、難易度自体も高め。社会保険労務士おいても、例えば労務関連の補助業務で経験を積みながら学んだり、予備校などを使って学習したりなどを通じて資格取得を目指すのが一般的です。
(※5) 厚生労働省「job tag」(職業情報提供サイト/日本版O-NET)
(※6) 厚生労働省「第56回社会保険労務士試験の合格者発表(令和6年)」
【上級レベル】司法書士
司法書士は、おもに不動産・法人登記や、法務局・裁判所向けの書類作成などの独占業務を担う国家資格です。財産や権利といった法律に関わる各種手続きを代行できる専門資格で、高度な知識やスキルが必要とされやすく、平均年収も約1122万円(※7)と高めになっています。なお司法書士は、特別な受験資格がなく、新たにチャレンジしやすいのも特徴。ただし合格率は約5%(※8)と試験自体の難易度は高く、独学よりも、予備校や通信講座などの学習サービスを使って学んでいくのが無難でしょう。
(※7) 厚生労働省「job tag」(職業情報提供サイト/日本版O-NET)
(※8) 法務省「令和6年度司法書士試験の最終結果について」
【上級レベル】ITストラテジスト
ITストラテジストは、IT活用による経営支援に役立つ国家資格で、デジタル技術を通じてさまざまな企業の課題解決に向けた戦略の立案・実行などを手がける専門家です。情報処理技術関連の資格では、最難関クラスともいわれる専門資格で、合格率は15.8%(※9)。なおIT ストラテジストの資格が活かせる代表的な職種となる、ITコンサルタントの平均年収は、約685万円(※10)となっています。こちらも特別な受験資格はありませんが、難易度を考えるなら、IT関連の入門資格や十分な実務経験・スキルを習得した次のステップで目指すのが一般的です。
(※9) 厚生労働省「job tag」(職業情報提供サイト/日本版O-NET)
(※10) IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「令和6年度春期情報処理技術者試験(応用情報技術者試験、高度試験)及び情報処理安全確保支援士試験の合格発表について」
【中級レベル】不動産鑑定士
不動産鑑定士は、家や土地の売買や担保にあたり、適正な価格の評価をおこなう国家資格です。おもに、不動産鑑定評価書の作成を独占業務とする専門家でもあります。こうした不動産鑑定士の業務は、例えば物件を売ったり賃貸に出したりなど、幅広いシーンで必要とされやすくニーズも高め。将来的な安定性があり、また平均年収は約551万円(※11)となっています。なお不動産鑑定士も特別な受験資格はありませんが、試験合格率は約17%(※12)。やや難関レベルの専門資格でもあり、一定の学習期間が必要となるでしょう。
(※11) 厚生労働省「job tag」(職業情報提供サイト/日本版O-NET)
(※12) 国土交通省「令和6年不動産鑑定士試験論文式試験の結果について」
【中級レベル】行政書士
行政書士は、おもに官公庁向けの提出書類をはじめ、契約書や遺言書など権利・事実証明の関連書類の作成代行を独占業務とする国家資格です。例えば新規事業の許認可申請や法人設立時の手続きなど、複雑な処理を必要とする、さまざまな場面で需要を集める専門家となります。行政書士も今後の高いニーズが見込まれる専門資格で、平均年収は約551万円(※13)。なお行政書士の場合も、決まった受験資格がないため、異業種から挑戦しやすい特徴もあります。ただし合格率は約13%(※14)と、やや難関の専門資格でもあり、十分な学習期間を経て取得を目指すのが一般的です。
(※13) 厚生労働省「job tag」(職業情報提供サイト/日本版O-NET)
(※14) 一般財団法人 行政書士試験研究センター「令和6年度試験結果」
【中級レベル】宅地建物取引士(宅建)
宅地建物取引士は、おもに不動産の売買・賃貸借の契約にともなう、重要事項の説明を独占業務とする国家資格です。宅地建物取引士は、不動産取引事業において必ず所定人数を配置しなければならない専門家でもあり、人材ニーズも高い特徴があります。例えば不動産の売買・賃貸仲介や営業でも役立つ資格で、採用時の給与優遇や手当などを受けやすい一面も。なお宅地建物取引士の資格を活用できる、代表例でもある不動産営業の平均年収は、約580万円(※15)となっています。また宅地建物取引士でも、特別な受験資格は設けられていませんが、合格率は約19%(※16)とやや難関。独学でも目指すことは可能ですが、取得までにはかなりの時間を要することが見込まれます。
(※15) 厚生労働省「job tag」(職業情報提供サイト/日本版O-NET)
(※16) 一般財団法人 不動産適正取引推進機構「令和6年度宅地建物取引士資格試験結果の概要」
【中級レベル】中小企業診断士
中小企業心出しは、その名のとおり中小規模の法人を対象に、経営状況を見て今後どう事業を推進すべきかコンサルティングをおこなう国家資格です。国内産業の大半は、中小企業で構成されていることもあり、数多くのクライアントからの需要を集める専門家でもあります。業績支援を求めるクライアントへのコンサルティングはもちろん、専門ノウハウを活かして、どこかしらの企業内の経営層に近いポジションに就くことも可能。活躍の場が幅広く、将来的には個人の経営コンサルタントとして独立を目指すこともでき、平均年収は約948万円(※17)と高めになっています。なお中小企業診断士でも受験資格はなく、試験合格率は約28%(※18)。他の国家資格に比べると、合格率はやや上がっていますが、一定の学習期間がないと取得するのは難しいでしょう。
(※17) 厚生労働省「job tag」(職業情報提供サイト/日本版O-NET)
(※18) 一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士試験 申込者数・合格率等の推移」
【入門レベル】キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは、職業選択やキャリアプランニングなどのアドバイザーとして、よりよい働き方に向けた幅広いサポートをおこなう国家資格です。現在では、全体的な寿命が延びてきていることもあり、年齢問わず現役で活躍しようと考える人材も増えてきています。また少子高齢化により人材確保が難しくなっている背景もあり、求職者のサポートを通じて、各企業の求人・採用にも寄与する専門家として、高い需要を集めています。なおキャリアコンサルタントの平均年収は約551万円(※19)で、合格率は約60%(※20)。比較的合格率は高めですが、受験資格として一定の実務経験、もしくは所定の養成講習の受講が求められます。異業種から新たに目指すなら、自己学習と同時に養成コースの修了が必要となるため、資格取得までには一定の年数がかかるケースもあります。
(※19) 厚生労働省「job tag」(職業情報提供サイト/日本版O-NET)
(※20) 特定非営利活動法人 日本キャリア開発協会「第28回キャリアコンサルタント試験 試験結果」
【入門レベル】介護福祉士
もし福祉業界で収入アップを図るなら、まず介護福祉士を目標に資格を取得していくのがおすすめ。介護福祉士の取得には、受験資格として所定の実務経験や養成ルートが求められますが、その他の福祉関連資格の入門にもなっています。福祉業界で何年か経験を積んできた際には、介護福祉士から取得してレベルアップしていくことで、高収入を狙いやすくなります。例えば介護福祉士の上位資格となる、介護支援専門員では、平均年収は約422万円(※21)。なお介護福祉士の合格率は、78.3%(※22)となっていて、初級編としてはかなり目指しやすい専門資格でもあります。
(※21) 厚生労働省「job tag」(職業情報提供サイト/日本版O-NET)
(※22) 公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第 37 回介護福祉士国家試験の合格発表について」
【入門レベル】基本情報技術者、応用情報技術者
基本情報技術者や応用情報技術者は、情報処理技術関連の代表的な資格で、プログラミングやシステム開発などで求められるノウハウに関する国家資格です。DX化が進んでいる昨今では、特にIT分野の専門スキルを持つ人材の需要は高く、収入アップを目指した転職にも役立ちやすいでしょう。なおそれぞれの資格を活かせるシステムエンジニアの場合、平均年収としては、システムエンジニアの平均年収は、Web開発分野で約558万円(※23)・基盤システムで約685万円(※24)。いずれも受験資格はなく、新たにチャレンジしやすい専門資格でもあります。ちなみに合格率は、基本情報技術者で約41%(※25)、応用情報技術者で約24%(※26)となっています。
(※23) (※24) 厚生労働省「job tag」(職業情報提供サイト/日本版O-NET)
(※25) IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「情報処理技術者試験統計資料」
(※26) IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「令和6年度春期情報処理技術者試験(応用情報技術者試験、高度試験)及び情報処理安全確保支援士試験の合格発表について」
まとめ
ここまでには高収入を目指しやすい専門資格についてご紹介してきましたが、当然ながら平均年収が高いほど、難易度は上がっていく傾向が見られます。専門性が高くなればなるほど、収入アップは狙いやすいものの、取得までにはまとまった費用や期間がかかるケースも十分に考えられるでしょう。もし高収入が見込める資格が求められる仕事への転職を考えるなら、まずは学習に必要な時間やコストなどのシミュレーションをしてみることも大切です。今回ピックアップした資格も参考にしつつ、どのように転職活動や学習を進めるとよいのか検討してみましょう。