少子高齢化が進み、さまざまな福祉サービスの需要が高まる昨今、まったくの異業種から介護職に挑戦してみたいと考えるのも珍しくありません。また「社会や人のためになる仕事がしたい」「人と接するのが好き」など、自分なりのやりがいを求めて、介護職への転職を検討するケースも多々見られます。そこで今回は、「資格なし」や「未経験」から介護職をはじめるのにおすすめできる、デイサービスへの転職事情についてご紹介。デイサービスで働くメリットや、転職時の注意点なども含めて解説していきます。
そもそもデイサービスとは?
デイサービスとは、おもに日常生活のサポートを必要とするご高齢者を対象に、通所にて介護サービスを提供する福祉事業です。デイサービスでは、一般的にはご自宅などから施設へ通っていただき、生活支援や機能訓練をはじめとした介護をおこないます。老人ホームや高齢者向け住宅(サ高住)などのように、施設に入所して生活してもらうのではなく、あくまで通所が前提となります。施設内での日中の介護サービスが終わったら、送迎してご自宅に戻るタイムスケジュールが基本です。
デイサービスには大きく分けて5つに分類される
基本的にデイサービスでは、次のような介護サービスがおこなわれます。
・バイタルチェック(血圧などの体調管理)
・身体介助(ランチ・おやつの食事介助、入浴介助、排せつ介助)
・機能訓練(ラジオ体操やストレッチなど軽い運動)
・レクリエーション(ゲームや散歩などの外出、季節のイベント)
・送迎(施設への行き帰りの移動支援)
各施設で決まっているプログラムに合わせて、上記のような介護サービスを提供していきます。ちなみにデイサービスは、各施設で提供している介護サービスに応じて、大まかには次のような5つの種類に分けられます。
<一般型デイサービス>
上記の介護サービスを中心的におこなう施設です。1日に30名~40名ほどが通う大規模型から、10名程度の小規模型まで施設ごとに利用人数はさまざまで、運営する法人によって異なります。一般的には運営元が大きくなるほど、施設規模も大型になる傾向が見られます。
<認知症対応型デイサービス>
認知症の診断を受けた利用者様専用のデイサービスで、上記のような介護サービスに加えて、症状の進行を防ぐケアがおこなわれます。
<リハビリ特化型デイサービス>
病気などにともなう機能回復や、運動能力向上などのリハビリをメインにおこなうデイサービスです。一般型デイサービスのような身体介助は省略されるケースが多く、機能訓練を中心としたプログラムを進めるのが基本となります。
<療養型デイサービス>
看護師による常時観察や、後遺症や特定の疾病を患う重度要介護者を対象とするデイサービスです。医療ケアを必要とする利用者様に対して、医師や看護師と連携した介護サービス(身体介助も含む)を提供し、心身機能の維持や精神的なサポートをおこないます。
<お泊りデイサービス>
日中のプログラムに終えた後、そのまま施設内に宿泊することもできるデイサービス。日中利用の延長として利用できるのが一般的です。
「資格なし」の転職にもおすすめ!未経験からはじめやすい理由は?
デイサービスは、通所による介護施設となる点から、専門的なスキルや知識に自信のない初心者でもチャレンジしやすい転職先でもあります。では実際に、どのような観点から挑戦しやすいのか、具体的に見ていきましょう。
介護度の低い利用者様が多い
厚生労働省の調査(※1)によると、デイサービスのような通所介護の利用者比率として、要介護1~2認定者が「66.9%」を占めています。ちなみに要介護1・2の場合、以下のような介助レベルとなります。
要介護1:日常生活の多くは自力で問題ないものの、一部の動作に介助が必要。(排せつや入浴の見守り程度)
要介護2:歩行や着替えなどの動作に介助を要することがあり、排せつや入浴を含む生活全般に見守りが必要。
なお要介護認定は1~5までの段階があり、数字が大きくなるにつれて介助レベルも高くなります。こうした背景や上記のデータからもわかるように、デイサービスの利用者様の7割近くは、介助レベルが比較的低くなるといえます。
さらにデイサービスでは、日中の決まった時間帯のみの介護プログラムとなり、食事・機能訓練・レクリエーションが中心となりやすい傾向も見られます。資格がなくても対応できる介護業務も多いことから、未経験でもチャレンジしやすくおすすめです。
(※1) 厚生労働省「令和5年度 介護給付費等実態統計の概況」
機能訓練やレクリエーションで活躍できる
デイサービスでは、身体介助だけでなく、機能訓練やレクリエーションといったプログラムが中心におこなわれます。こうした機能訓練やレクリエーションでは、専門的な介助スキルよりも、利用者様と親睦を深めながら楽しく取り組めるようなサポートが求められます。介護関連の資格や知識がなくても、利用者様との交流を大切にする姿勢があれば活躍しやすいのも、デイサービスの大きな特徴。利用者様との信頼関係を築く存在として、存分に能力を発揮しやすい介護職でもあります。
決まったスケジュールで働きやすく体力的な負担を抑えやすい
デイサービスは、基本的に日中のみの介護施設で、勤務シフトが固定されやすいのも特徴です。お泊りデイサービスのように、一部夜間まで稼働する施設はあるものの、通常は朝から夕方までの日中だけで働きやすい介護職となります。また1日のタイムスケジュールもだいたいは決まっているため、時間どおりにプログラムが進めば、遅くまで残業する心配もさほどありません。デイサービスなら、このような安定した働き方がしやすく、体力的にも無理なく介護職に挑戦しやすいでしょう。
デイサービスで介護の仕事にチャレンジするメリット
デイサービスは、介護業界の入門としておすすめできるうえに、働き方としての利点も数多くあります。
「土日休み」や「日勤のみ」の勤務形態が可能
もちろん施設によって異なりますが、一般的なデイサービスは、平日の日中のみで開設している場合が多々見られます。介護職というと、勤務シフトが不規則になりやすいイメージがあるかもしれませんが、デイサービスなら「土日休み」「日勤のみ」の一定したリズムで働ける職場も多数。例えばよくあるオフィスワークからの転職でも、さほど大きく勤務形態を変えずに働きやすいメリットがあります。また家庭環境をはじめ、プライベートなどの事情から週末や夜間の出勤が難しいケースでも、デイサービスなら無理なく勤務しやすいでしょう。
自分のアイデアを積極的に活かしやすい
デイサービスは、自宅にこもりがちな利用者様に対する、日々の充実感・リフレッシュ・ストレス解消などの場にもなる施設です。身体介助や日常動作などの訓練の目的もありますが、楽しいレクリエーションに力を入れることで、心身機能の向上を図っている施設もあります。こうしたレクリエーションは、利用者様が有意義な時間を過ごせるように、何をするといいのか施設の介護スタッフが立案していきます。比較的自由な発想で企画できることが多く、自らのアイデア力を活かして活躍することも可能。「みんなが盛り上がる企画を考えるのが好き」「ゲームやイベントを考案するのは楽しい」などの場合には、自分の得意分野で本領発揮ができるチャンスもあります。
コミュニケーション力を存分に発揮できる
レクリエーションの時間だけでなく、食事なども含めて、デイサービスに通うこと自体を楽しんでもらうのも施設運営には重要です。デイサービスへの通所により、社会とのつながりも実感してもらえるように、利用者様一人ひとりとの関係性を築いていくのも大切な役目。積極的にコミュニケーションを取って交流しながら、親睦を深めていくことが欠かせません。例えば営業や接客・サービス業における、顧客対応の経験やスキルを活かすことも可能。もしくは「人と話すことが好き!」など、持ち前のコミュニケーション力を発揮して活躍したい場合にもおすすめです。
デイサービスへの転職に向けて気を付けたいポイント
デイサービスの転職時には、きちんと理想の働き方を叶えるためにも、次のような点には十分な注意が必要。特に介護職未経験からのスタート時には、以下のポイントもしっかりと頭に入れておきましょう。
夜勤手当がなく一時的に収入が下がる可能性も
日中稼働のみのデイサービスでは、老人ホームのような入所施設に比べて、夜勤手当が付かない一面があります。夜勤手当がない分、収入が下がりやすい部分もあり、特に無資格・未経験ではスキル面から給与設定が低めになっているケースも。もちろん勤続するなかで、能力に応じて昇給していくチャンスもありますが、転職時には今までよりも収入が下がってしまうリスクもあります。どうしても夜勤手当が付くほうが、確かな収入にはつながりやすく、日勤だけだと給与が下がる可能性も高い点には注意が必要です。
運転免許が必須とされるケースがある
デイサービスでは、利用者様の送り迎えまで対応するのが基本です。送迎専用のドライバーを配置している場合もありますが、施設によっては介護スタッフが運転するケースも。そのため介護関連の資格は問われないものの、運転免許や普段から車に慣れていることが採用条件となるパターンもあります。施設ごとに異なるため、デイサービスへの転職時には、応募資格も含めて詳細に確認しておきましょう。
自分の希望する働き方ができる施設か十分に確認する
デイサービスには、さまざまな種類があるうえに、各施設で業務内容や勤務条件も当然ながら変わってきます。例えばお泊りデイサービスの場合には夜勤が発生したり、施設によっては土日出勤があったりするケースも。各施設で提供している介護サービス次第でも、スタッフとしての役割は異なってくるので、転職先を探す際には十分な情報収集も重要。求人票はもちろん、どのような施設なのかホームページや口コミなども含めて、しっかりと調べておくことも大切です。自分の思うような働き方が叶う環境なのか、できるだけ把握できるように調査しておきましょう。
まとめ
デイサービスは、施設にもよりますが自立度の高い利用者様が比較的多く、介護未経験や無資格からスタートしやすい特徴があります。さらに基本的に日中の介護サービスとなるため、働き方が安定しやすく、心身にも無理なく活躍しやすいのも利点です。また場合によっては、介護関連の資格取得を通じたスキルアップ支援をおこなっている施設もあり、まったくの初心者でも着実に専門技術を磨ける職場もあります。転職時には取得できていなくても、ゆくゆくは介護関連の資格を目指したい時には、こうした研修・教育体制などの待遇面も十分にチェックしてみましょう。新たに介護職への転職にチャレンジする際には、ぜひ本記事も参考に、デイサービスも選択肢に入れながら次の職場を検討してみてください。