出産をしてライフスタイルが大きく変わると、今までの仕事を続けるのが難しかったり、働き方を調整する必要があったり、転職を考える状況になることも珍しくありません。とはいえ産後に子育てをしながら転職しようと思っても、育児との両立を考えるとハードルが高く、どう進めるべきなのか悩んでしまいますよね。そこで今回は、産後のワーキングママの転職準備として、覚えておきたいポイントを解説していきます。
産後のワーキングママの転職状況は?
近年は、少子高齢化により労働力人口が減少していることもあり、国全体として多様な人材活用が進められています。女性活躍推進などの施策も、政府によって積極的に実施されていることから、子育て世代も含めて女性の就業率は高まっているのが現状です。また家庭の状況を理由に、例えば採用・待遇・昇進などで、不当な扱いをすることは違法とされています。こうした背景からも、以前から比べてみると、産後のワーキングママの転職はしやすくなっているといえるでしょう。
とはいえ育児との両立を考えると、どうしても働き方には制約が生まれやすいのが現実で、希望条件に合いそうな転職先が見つかりにくい部分も少なからずあります。実際に政府による調査でも、「子どもがいる共働き夫婦では妻のほうが帰宅時間は早い」など、育児の負担が女性に偏っている傾向も見られました。[※1]
またワーキングママの就業状況として、非正規雇用から正社員を希望する場合に、転職率が下がりやすいとの調査結果も出ています。[※2]やはり正社員として働くにあたっては、「急な休みが発生する可能性がある」「残業ができない」などの育児にともなう制限が想定されやすく、転職が難しい部分もあるようです。
ただしきちんと準備をして転職活動をすることで、理想的な働き方を叶える職場に出合えるチャンスはあります。では具体的に、産後のワーキングママはどのように転職活動を進めていくといいのか、以下から詳しく見ていきましょう。
[※1]厚生労働省「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会 第8回資料3」
[※2]厚生労働省委託調査 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「出産・育児等を機に離職した女性の再就職等に係る調査研究事業 労働者アンケート調査結果」
産後のワーキングママの転職が感じやすい不安と対策方法
出産してライフステージが変化すれば、普段の生活環境もガラリと変わってくるので、何かと戸惑うこともたくさんあるでしょう。そうしたなかで、新しい職場を探して再スタートをきろうと思うと、どうしてもさまざまな不安も出てきてしまいますよね。では産後のワーキングママにとって、どのような部分で不安を感じやすいのか、よくある例とその解消法についてご紹介していきます。
家庭との両立がうまくできるのか心配
産後のワーキングママにとって、子育てときちんと両立しながら働ける職場かどうかは、非常に重要なポイントでしょう。ワーキングママは保育園の送り迎えや、子どもの急な体調不良・行事など、育児のスケジュールともうまく調整しながら働くことになります。できれば子育ても仕事もバランスよく取り組めるのが理想ですが、実際にやってみないとわからない部分も多いですし、転職の際には不安になってしまいますよね。
産後のワーキングママに限らず、どのような転職でも大前提にはなりますが、あらかじめ十分に待遇や福利厚生を確認しておくことが大切です。例えば産後のワーキングママの場合、「フレックスタイム制やリモートワークができる」「子どもの看護休暇がある」など、子育て支援の充実具合をチェックしておくのがおすすめ。また実際に社内の制度がどの程度利用されているのか、過去の実績も調べておくと、入社後のイメージも明確になります。面接時の質問や口コミなどを通じて、事前に職場環境をリサーチしておくと安心です。
採用されるかどうかに懸念がある
ここまでにも出てきているように、子育て中はどうしても働き方が制限されることも多く、採用してもらえる企業が見つかるのか不安に感じてしまうかもしれません。また好条件になればなるほど、当然ながら採用の倍率は高くなるため、選考の基準が厳しくなるケースも想定されます。
とはいえ基本的に重要なのは、あくまでいかにして仕事に貢献できるかという点です。たとえ勤務時間などに限りがあるなかでも、十分に自分の力を発揮して活躍できることが伝われば、きちんと採用にもつながっていきます。例えば、なるべく今までに培った経験や知識が活かせる職場を探す、手の空く時間にスキルアップの勉強をするなど。しっかりと自分をアピールできるような対策をしておくと、採用される確率も高くなるでしょう。選考に通過しやすい準備をするのも、不安解消のカギとなります。
希望のキャリアを形成するのが難しい可能性がある
産後の理想的な働き方は、人によってさまざまです。例えば、「子育てをしながらどんどんキャリアアップもしたい」というワーキングママも少なくないでしょう。ただ忙しく子育てをするなかで、働いて自分なりのキャリア形成もしていくのは、時間的にも労力的にもなかなかハードルが高く感じてしまうかもしれません。
入社後のイメージが湧かなかったり、キャリアパスに不安があったりする際には、各企業の採用ページなどを確認してみるのがおすすめ。特に子育て支援や働きやすい環境整備に力を入れる企業なら、実際に活躍しているワーキングママの事例など、参考にできるロールモデルが公開されているケースもあります。どのようなワークスタイルが実現できる職場なのか、十分にリサーチすることで、ベストマッチな転職先を見つけることにもつながります。
産後の転職は育休中でも育休明けでも可能
産後の時点で仕事に就いているワーキングママにとっては、もし出産を機に転職を考えるなら、タイミングで悩んでしまう場合もあるでしょう。
ちなみに育休を取得したら、基本的には現在の職場に戻るのが前提にはなりますが、仮に休業期間中に退職しても問題はありません。家庭の事情などで、どうしても復職が難しくなり、退職するケースも多々見られます。
そのため産後の転職は、育休の期間中でも、育休明けで復職した後でも可能ではあります。ただし育休中と育休明けでは、転職活動の進め方は変わってくるうえに、それぞれでメリットやデメリットは異なります。ご家庭や現職などの状況も見ながら、どのタイミングがいいのか検討してみましょう。
子どもの預け先があるなら育休中もおすすめ
育休中は基本的に保育園への入所が難しく、本格的な転職活動をするには、お子さんの預け先を確保する必要があるでしょう。例えば認可外保育所や認定こども園であれば、育休中でも利用できるため、転職に向けてあらかじめ入所しておく方法もあります。またご両親といった家族などに預けられる場合には、一時的にお子さんを見てもらいながら、転職活動を進めるケースも考えられます。
育休中であれば、現職の仕事の負担がない状態で、転職活動に専念しやすいのがメリットです。また業務の引き継ぎなどの手間もなく、スムーズに転職しやすい利点もあります。ただし育休中の転職では、例えば「入社後の預け先が未確定で採用されない」「仕事は決まったものの保育園が見つからない」など、就業に向けたトラブルが想定されやすい一面も。さらに育休中に退職すると、給付金の支給もストップしてしまう点には要注意です。なお代わりに失業保険の受給はできるので、退職時には忘れずに手続きをするようにしましょう。
保育園を決めてから転職したいなら育休明けの復職中がおすすめ
育休明けで復職している場合、すでに保育園に通っている段階なので、預け先がきちんと決まった状態で転職活動ができます。また育児休業給付金も満額で受給できるうえに、復職していれば当然ながら給料が出るため、金銭面の不安がなく転職活動ができるメリットもあります。
ただし復職して働きながら、転職活動も育児もすることになるので、その分どうしても負担はかかりやすくなるのは難点です。また出勤日には、面接などの選考に対応するのが難しく、場合によっては有給休暇なども利用しながら転職活動を進めることになります。さらに、いざ転職先が決まって退職する際には、業務の引き継ぎなどにも対応しなければなりません。経済的な安心感を持って転職活動がしやすい一方で、うまく自分の時間がつくれるように、徹底したスケジュール管理が求められる一面もあります。
産後の転職活動と子育てを無理なく両立させるコツ
産後に転職を考える場合には、育休中でも育休明けでも、いずれにしても子育てと両立しながら進める必要があります。なかなか時間が取りづらい部分もあるなかで、できるだけ無理なく転職活動をするために、知っておきたい子育てとの両立に向けたポイントも見ていきましょう。
転職のプロの力を活用する
転職サイトのなかには、各求職者に担当者がついてサポートする、エージェント型の媒体も多くあります。サポート内容にはそれぞれ違いがありますが、より適切な転職先とのマッチングを全面的にフォローしてもらえるケースも。職場探しから選考対策まで、人材業界のプロから手厚く支援してもらうことで、効率的に転職活動を進めることが可能です。時間も手間も省きながら、成功率の高い転職活動がしやすいメリットがあります。
周りとの協力体制を十分に整える
産後のワーキングママが、無理なく転職活動をするには、自分だけで何でも抱え込まないようにするのも大切です。例えばパートナーやご両親など、家族にも転職したい旨を相談しておき、サポートしてもらえる体制を整えておきましょう。転職を検討する段階で、まずは周りの家族としっかり話し合いをして、どう協力し合っていくのか考えておくことが不可欠です。場合によっては、例えば近所に住むママ仲間など、お互いに助け合える知人や友人に根回ししておくのもいいかもしれません。何かあった時には、誰かの力も借りられる状態をつくっておくのがベストです。
外部の育児サポートの利用も検討しておく
転職活動中には、お子さんを預けなければならない場面が何度か出てくることも想定されます。ご家族などの身近な人に頼れる場合には問題ありませんが、どうしても預け先がないケースも考えられるでしょう。そうした際には、例えばベビーシッターや一時保育など、外部の育児サポートの利用も検討する必要があります。また各自治体では、子育てを支援する公的サービスも提供しているので、万が一に備えてあらかじめ調べておくのが無難。いざという時にいつでも活用できるように、お住まいの地域ではどのような育児サポートがあるのか、十分にチェックしておくと安心です。
まとめ
産後のワーキングママの転職では、何かと不安な部分もあるかもしれませんが、大前提としてきちんと事前準備をしておくのが大切。今回見てきたように、産後の転職はタイミング次第で動き方も変わってくるため、まずはどのようなスケジュールで進めるのか計画する必要があります。そのうえで、必要な手続きや職探しなど、何をすべきなのか把握することからはじめていきましょう。