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「越境転職」とは?異業種・異職種への就職のメリット、デメリット

「越境転職」とは?異業種・異職種への就職のメリット、デメリット

さまざまな境界線や領域を越えることを「越境」といいますが、近年では転職市場やビジネスでも使われている言葉です。大まかにいえば、現職までに経験のない新しい仕事に挑戦するケースを「越境転職」といいます。今回はこの越境転職も視野に入れておくことで、今後のキャリアにどう影響するのか、メリット・デメリットなどを中心に解説していきます。

大きなキャリアチェンジを図る「越境転職」が増加

転職のイメージ図

越境転職とは、今までに経験してきた業種および職種とは、大きく異なる職業に就くことを指します。キャリアチェンジのなかでも、特に大幅な方向転換を図る転職方法で、異業種・異職種を目指すものです。

転職に向けたルートは幅広く存在しますが、一般的によくあるのは、「今までと同様の職種で業種のみ変わる」パターンでしょう。「事務職は変わらないまま、機械メーカーから不動産業に就職」など、これまでの担当業務をそのまま活かせるように、異業種・同職種での転職も多く見られます。もしくは同業種・同職種のまま、現職と似たような事業を手がける企業に転職する方法もあります。また仮にキャリアチェンジをしたい場合には、例えば「機械メーカーの事務職から、同じ製造業の営業職になる」など、同業種・異職種に転職するケースも考えられます。

このような転職のなかでも、「機械メーカーの事務職から、不動産業の営業職」などのように、まったく新しい分野に挑戦するのが越境転職です。自分自身のなかで、既存の枠組みを越えたキャリアチェンジを図ることから、越境転職と呼ばれて注目されています。

越境転職が増えてきている理由は?

現職までの経験に沿ってキャリアを継続していくケースも多いなかで、越境転職は、ある意味では一か八かの選択ともいえます。ではなぜ、越境転職のようなチャレンジングな転身が増えているのか、まずはその背景から見ていきましょう。

少子高齢化による慢性的な人手不足

そもそも少子高齢化が進んでいる現代では、社会全体としての労働人口が少なく、各企業において人材不足が深刻な問題となっています。そこで越境転職を積極的に受け入れることで、より幅広い人材を活用し、人員を確保する施策を進める企業も増加しているのが現状です。

異業種・異職種から入社する中途人材に対しては、時間的にもかなりの教育コストがかかることから、多くの場合には比較的若年層が採用されやすい一面もあります。しかし近年では、若年層の新規採用だけでは人員が揃いにくく、年齢に関係なく迎え入れる体制にしている企業も増えてきています。またあえて中高年層による越境転職を受け入れることで、自社で必要なスキルを指導する代わりに、前職まで培ったビジネスノウハウを社内に持ち込んでほしいと考えるケースも。このように若手だけでなく、越境転職により中高年層の活躍を促すことで、人材を充実させようと取り組んでいる企業も多々見られます。

価値観が多様化して人材が流動しやすくなっている

個人それぞれにとって、長年にわたって働いていくうえで何を重視すべきなのか、キャリアに対する考え方が多様化しています。単純な収入面だけでなく、働きやすさ・やりがい・自己成長など、仕事をするなかで優先したいことは個人ごとに大きく異なってきています。こうした背景から自分自身にとって、本当に必要としていることを求めて、転職するケースが当たり前になっています。そこで自らの希望を叶えるための転職として、異業種・異職種に挑戦する場合も多くあります。

このように自己実現に向けた選択肢の一つとして、仕事を変えることも選ばれやすくなっていることから、越境転職も増えてきています。「一つの会社に入ってそのまま定年退職」というような、“生涯一社”だけではない価値観も広まっているからこそ、越境転職にもつながっています。

自律したキャリア観が広まってきている

平均寿命が伸びて、還暦を過ぎても現役で仕事をしようと考えるケースも多々見られています。定年後を見据えたキャリア形成のためにも、あえて越境転職に踏み出すことで、経験値を高めたり新たなスキルを磨いたりして将来の選択肢を増やす場合もあります。もしくは、生涯にわたって仕事を続けるための技術取得に向けて、越境転職をして手に職をつけるパターンなども珍しくありません。

このように所属している会社頼りにするのではなく、自分自身で主体的にキャリアを構築する考え方から、越境転職にもつながりやすくなっています。会社に用意されたルートではなく、越境転職を通じて自ら活躍の場を選んでいくことで、自律的にキャリアを築いていく方法もあります。生涯をかけてキャリアを続けていくためにも、越境転職を通じて、自己研さんを図っていくのも一つの手です。

今までにないイノベーションを求める企業も多くなっている

さまざまな技術革新が進んで、消費者のニーズも複雑になっている昨今では、従来の事業展開では生き残りが難しくなっている一面もあります。さらに世界的な混乱を招いたコロナ禍をはじめ、社会情勢の変化や災害などの影響から、先行きの見えない時代ともいわれています。このように激しい時代の流れに対応していくためにも、各企業では新たな分野への進出など、革新的にビジネスを推進していくケースも増えてきています。こうした背景から、組織に新しい風を吹かせる意味でも、あえて異業種・異職種から転職する越境人材を積極的に受け入れるパターンも多々見られます。越境転職を図る人材の新規採用により、画期的なイノベーションを進めていくことで、企業としての成長を促進しようとする考え方も多くなってきています。

越境転職で得られるメリット

メリットのイメージ図

では実際に越境転職を目指すことで、自分自身のキャリアパスに対してどう影響するのか、具体的なメリットも見ていきましょう。

自分自身の新たなポテンシャルを伸ばすチャンスになる

越境転職は、今までに経験のない仕事へのキャリアチェンジを通じて、自分自身の可能性を発掘して育てるものでもあります。もちろん新しい仕事に就いたからといって、必ず何かしらのスキルが習得できるとは限りません。しかし新たな能力を磨く目的であれば、あえて未経験の業種・職種選ぶ越境転職により、現職までに学ぶ機会がなかった知識や技術を身につけることにつながりやすいでしょう。かなりのハードル感はあるかもしれませんが、専門性の高い業務に越境転職ができれば、働きながら貴重なノウハウを蓄えられるチャンスもあります。また単純に挑戦するタイミングがなかっただけで、越境転職した仕事がマッチするポテンシャルも十分に想定できます。

なお越境転職が見られやすい、代表的な分野としては、IT業界のエンジニアがあります。特にIT業界は、人材不足が深刻化している傾向にあり、未経験からのチャレンジを積極的に受け入れているケースも多々見られます。例えば一般事務からITエンジニアなど、越境転職で大幅な方向転換をしてみるのもおすすめです。

一つの会社に依存しないキャリアを構築できる

越境転職によって自律したキャリアを築くことで、仕事の選択肢が広がり、自分の力で働き方を選びやすくなる可能性も考えられます。もちろん一つの会社に所属して、着実に出世していく将来設計もいい方法ではあります。しかし業務上で身につくスキルとしては、特定の企業や業種・職種でしか通用しないものに限定されやすい一面も。また最近では、生成AIをはじめとした高度な技術が発達し、機械やシステムに代替されることが推測される仕事も一部では出てきています。

こうした背景からも、現職からキャリアチェンジを図ろうとする場合、越境転職をして手に職をつけることで活躍の場を広げていくチャンスも想定されます。また越境転職をして新たな経験を積んだのちには、仕事内容によっては、ゆくゆくは独立して自ら事業を立ち上げたり個人で請け負う業務ができたりする場合もあります。越境転職を通じて、年功序列や終身雇用にとらわれない働き方につながることも、十分にあり得ることです。

自分にとって本当に「やりたいこと」を見直せる

越境転職も視野に入れて、新しい仕事を探してみることで、今まで見えてこなかった選択肢が出てくる場合もあります。これまでの経験やスキルを活かしたいと考えると、どうしても似たような業種や職種に固執してしまいがちです。しかし現職とは大きく変わる異業種・異職種の仕事でも、自分の能力を存分に発揮できたり、高く評価されたりするケースは珍しくありません。企業側としても、例えば「社内に○○のノウハウがないから新たな人材に任せたい」などのように、自社にないものこそ求めることも多く見られます。そこで越境転職を目指すことも考慮しておくことで、より多彩な可能性を見つけ出せるチャンスにも期待できるでしょう。

また越境転職を通じて、自らの将来的なルートを幅広く考えてみるなかで、自分自身にとってのやりたいことが明確になってくるパターンもあります。こうして目の前の「できそうなこと」にとらわれるのではなく、仕事以外の経験も含めて、本質的に「やりたいこと」を見出すきっかけにもなります。このように越境転職も想定しておくことで、本来の自分自身を振り返って、より充実したキャリアにつなげやすくなるのもメリットです。

越境転職をする行動力そのものが評価される可能性も

越境転職をするチャレンジ精神や積極的な姿勢など、企業によっては高く評価しているケースもあります。前述にもあるように、組織に変革をもたらす目的で、越境転職を考える人材を採用する企業も存在します。こうしたパターンでは、越境転職によって、主体的にキャリアを築こうとする考え方自体に期待を寄せられる可能性も考えられます。もちろん「ただやってみたい」などのような、あいまいなスタンスやありきたりな決意だけでは、なかなか採用にはつながりません。なぜ越境転職をしたいのか、明確な根拠や熱意を伝えることで、まったくの未経験の仕事でも挑戦できるチャンスにつながることもあります。当然ながら未経験からの育成を前提とした求人にはなるものの、そもそも越境転職の人材を求める企業であれば、異業種・異職種でもマッチする場合も十分に想定されます。

市場価値の高い人材として成長できる

越境転職を通じて、幅広い業務にチャレンジしてみることで、さまざまな経験をしてビジネスに対する知見を広げられます。越境転職で新しい分野に携わることで、単純に多彩な仕事に対するスキルが身につくだけでなく、今までにないビジネスシーンにも直面しやすくなるでしょう。例えば困難な状況やトラブルなど、これまでになかった場面に遭遇する可能性も高い分、自らの経験値にもつながりやすくなる一面も。このように多様な体験をしたり、実績を積み重ねたりすることで、多くの学びや刺激を得て自己成長につながるチャンスにも期待できます。その市場価値の高さから、場合によってはその先のキャリアチェンジなど、さらなる将来的なステップを促す可能性も見込めます。

越境転職で気を付けておきたいデメリット

「デメリット」のイメージ図

越境転職は、異業種・異職種に新しくチャレンジするのが前提となるからこそ、注意しておきたい部分もいくつかあります。越境転職を検討する際には、次のようなデメリットがあることも頭に入れつつ、より最適な選択なのか検討してみましょう。

なかなか採用につながらない可能性もある

異業種・異職種の仕事にチャレンジする際には、今までに培ってきた能力がなかなか評価されにくい一面もあります。単純にこれまでまったく異なる仕事をしてきた人材に対しては、どのように活躍してもらえるか、入社後の活躍イメージは湧きにくいのが現実です。一方で前職でも同じような仕事をしてきた人材なら、そこでの担当業務や実績などを聞くことで、ある程度のスキルレベルは判断できます。

このように越境転職のようなケースでは、その人材の経験をどう活かせるのか・育成にどれくらい期間がかかるのかなど、企業側として見極めるのが難しい部分もあります。特に欠員補充を目的として求人をおこなっている場合、前任が担当していた業務をカバーできる人材が求められやすく、即戦力が優先的に採用されやすくなります。越境転職では、未経験からのポテンシャル採用となる分、仕事が決まりにくくなる可能性も想定されます。

一時的に収入が下がるリスクも想定される

越境転職では、未経験からの採用となることから、最初のうちは給与水準が低めとなる場合も珍しくありません。前職から大きくかけ離れた仕事になる分、経験やスキルで優遇される部分が少なく、以前よりも収入が下がってしまうリスクもあります。もちろん新たに知識や技術を磨いていくことで、昇給などにより年収が上がっていくことも考えられますが、一定の期間は給与が減ってしまう可能性も少なくありません。経済的に余裕がありそうなら問題はないですが、越境転職によって生活的に支障はないのか、しっかりと見極めておくことも重要です。

とはいえ越境転職をする方向性次第でもあるが、将来性も含めた生涯年収で考えるなら、一時的な減収はあるものの現状よりプラスになるケースも十分に想定されます。目先の状況だけにとらわれず、長い目で見た時の利点もきちんとイメージしておくことが大切です。

下積み期間が長引きやすくなる

越境転職で新たな仕事に挑戦する場合、難易度の高い分野になるほど、必要なスキルを習得するまでに時間がかかりやすくなります。今までの経験が活かせる業務であれば、早期のうちから活躍して成果を出しやすい一方で、越境転職では日の目を見ない期間が続く可能性も考えられます。

また異業種・異職種にチャレンジするとなれば、新しく吸収すべき知識・技術量も多くなりやすく、自分から学ぼうとする姿勢がないとなかなか身につかない一面も。仕事をしながら自己学習も続けるなど、地道な努力が求められることもあり、根気よく取り組む心がまえがないと結局は離職につながってしまうリスクも想定されます。このような下積み期間があることも考慮したうえで、確かな意志を持って、将来につながるような越境転職を意識することも重要です。

思うようなキャリアを積めないケースも考えられる

希望の業種・職種につながる越境転職ができたとしても、実際にはなかなか思うような業務を担当できないケースもあります。例えば技術職に越境転職をしたとして、場合によっては何年経っても単純作業しか任せてもらえず、結局はうまくキャリア形成ができないパターンも少なからず考えられます。特に教育体制が確立されていない企業だと、未経験からの育成が十分におこなわれずに、仕事上で必要なスキルを習得する機会が得られない可能性も。越境転職で異業種・異職種にチャレンジする際には、入社後にどのようなステップを踏んで仕事を覚えていくのか、あらかじめ具体的なプロセスを確認しておくと無難でしょう。

異業種・異職種の転職を成功させるためのポイント

キャリアチェンジ

異業種・異職種にチャレンジする越境転職は、もちろん誰にでも挑戦するチャンスはある反面、なかなか想定どおりにはいかないリスクもあります。そうしたなかでも、できるだけ今後につながるような越境転職をするためには、次のようなポイントを意識しておくことも大切です。

なぜ越境転職を目指すのか動機を明確にする

越境転職は、理想のキャリアを叶えるための手段であり、目的ではありません。あえて異業種・異職種に挑戦してみることで、どのようなことを実現したいのか、まずは明確なビジョンを考えておくことが重要。どのような意図があって越境転職がしたいのか、その動機を具体的にしておく必要があります。

ただ「新しいことにチャレンジしたい」というだけでは、その新しい仕事を続けていくことに対する目標がない分、早期離職につながりやすいリスクも。仮に越境転職先で何か不満やストレスなどが出てきた時に、入社後して経験を積んだ先のビジョンがないと、すぐに挫折してしまう可能性が高くなります。

また越境転職がしたい理由を洗い出してまとめてみることで、実際に選考を受ける際の志望動機にもつながります。企業側としても即戦力としての採用ではない時こそ、ポテンシャルを見極める必要があり、志望動機から入社後の活躍イメージや意欲を汲み取りたいと考える部分もあります。そこで越境転職を考えたきっかけやエピソードを整理しておくことで、自らの意志がきちんと伝わるアピール要素としての活用もできます。

「キャリアの棚卸し」をして自己分析する

越境転職のように異業種・異職種にチャレンジする場合には、いかにして志望する企業に貢献できるのか伝えることも重要です。たとえ育成枠の採用だったとしても、もちろん企業側としてはただ育てる目的ではなく、その後の活躍に期待して採用するのが基本。そのため自分自身の強みもしっかりとアピールして、どのようにして事業の成長に役立てるのか、選考にあたって十分に自己PRにつなげていく必要があります。

また仕事をしていくうえで身につけられるスキルは、専門的な知識や技量に限らず、さまざまなビジネスシーンで求められる普遍的な能力も含めると幅広く存在します。そこで異業種・異職種を目指す越境転職では、今までの業務上における自らの実績を振り返る、「キャリアの棚卸し」をしておくのがおすすめ。どのようなポジションや仕事内容で、どういった成果を出してきたのか、あらためて洗い出して整理していくのが「キャリアの棚卸し」です。こうした「キャリアの棚卸し」をしておくことで、自分自身がどう評価できる人材なのか、可視化して自己分析を深められます。新しい分野に挑戦する越境転職だからこそ、企業側に自分自身を知ってもらうための自己分析が欠かせません。

越境転職以外の道も並行して考慮する

当然ながら越境転職をすべきかどうかは、将来的な理想像や状況などによって異なり、必ずしも正解ではありません。場合によっては現職の企業で勤続するか、転職するにしても同じような分野を続けていくほうが、適している可能性もあります。自分のなかで、越境転職をすべき明確な根拠があれば問題はありませんが、そうでない時には一度落ち着いて考え直してみるのがベスト。新しい仕事に挑戦してスキルアップしたい場合には、例えば社内で部署異動したり、配置転換を願い出たりによって実現するパターンなどもあります。本当に越境転職をしたほうがいいのか、しっかりと現状を見直しながら考えていくことも欠かせません。

まとめ

異業種・異職種を新たに目指す越境転職は、キャリアを積みたい個人側からも、採用する企業側からも注目されています。ただし個人としては、今までの仕事とは大幅に方向性が変わることから、大きな成長が見込める一方でさまざまなリスクも想定されます。とはいえ越境転職から、理想的なキャリアビジョンに直結するチャンスもあり、自分なりの将来像を叶えるための一つの手段でもあります。この先の長い仕事人生を考えたい時には、ぜひ本記事も参考に、越境転職も視野に入れて検討してみることをおすすめします。